2024-02

2022・10・30(日)ヘンデル:「シッラ」

    神奈川県立音楽堂  3時

 神奈川県立音楽堂が開催している「音楽堂室内オペラ・プロジェクト」の第5弾、ヘンデルのオペラ「シッラ」(全3幕)を観る。当初2020年3月に上演が予定されていながら、新型コロナ蔓延に入った時期だったため、延期されていたもの。

 演奏は、人気のファビオ・ビオンディ(指揮、vn、音楽監督)とエウローパ・ガランテ。
 配役は、ソニア・プリナ(シッラ)、スンヘ・イム(その妻メテッラ)、ヒラリー・サマーズ(ローマの騎士)、ヴィヴィカ・ジュノー(ローマの護民官レピド)、ロベルタ・インヴェルニッツィ(その妻フラヴィア)、フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(シッラの副官の娘)、ミヒャエル・ボルス(神)。その他、黙役の助演に神谷真士、片岡千次郎、亀山敬佑、桧山宏子、板津由佳が出ている。演出は、弥勒忠史が受け持った。

 シッラとは、古代ローマに実在した独裁者の執政官とのこと。オペラは専ら彼の好色の暴虐ぶりを描くというストーリーだが、最後は改心して辞任するというハッピーエンドになる。その改心のきっかけは「神の一喝」によるというから、その辺が如何にもバロック・オペラらしい唐突さというべきか。
 全3幕で、上演時間は40分・40分・35分という、ヘンデルのオペラにしては(?)比較的短い(ので有難い?)。ビオンディは、この作品は「ジュリオ・チェーザレ」よりも優れていると語っていたそうで、それは本気が冗談か判らないが、一理あるような気がする。音楽の流れが、実にいいのである。

 演奏の素晴らしさは、今更改めて言うまでもない。ビオンディの詩的な生き生きとした演奏構築をはじめ、歌手陣が見事の一語に尽きる。どの歌も胸のすくような伸びやかさで進んで行く。こういう演奏でバロック・オペラを体験できるというのは、何と幸せなことか。

 今回の弥勒忠史の演出は、以前の能舞台をイメージとした「メッセニアの神託」(☞2015年3月1日)に続き、今度は歌舞伎のイメージを取り入れた舞台づくりとなった。移動する赤い鳥居のような門をベースとした簡素な舞台装置ながら、雄弁な雰囲気を醸し出す。ただし、登場人物の演技や衣装(友好まり子)は、古来の歌舞伎スタイルとは些か異なる類のものである。
 こういう手法には、オペラ演出に新鮮な感覚をもたらす手段の一つとして、かつ日本発のオペラ演出として、大いなる賛意を表したい。

コメント

超一級のバロックオペラ公演でした

ビオンディさんの板についているというか半端ない見事な弾き振りに感心させられながらバロックオペラの素晴らしさを堪能しました。
 開幕前に客席と一体感を感じさせる神奈川県立音楽堂の大きさが、ロンドンでの初演当時と同じくらいと思われ、とても良い環境で演奏ができると語っていたビオンディさん。終演後でのスタンディングオべーションに包まれていた観客の反応でも、演奏の充実を物語っていました。
 音楽の流れに合わされた絶妙かつ自然体で巧みなウエローパ・ガランテの演奏と共に、歌手の熟達している発声による声の響きにも酔いました。定評のあるホールとは言え、演奏者の力量が伴ってのこと。絶妙なテンポによるオケの演奏に支えられ、個々の歌い手の素晴らしい声によって、ヘンデルの貴重なオペラを鑑賞することができて幸せでした。
 オペラ上演を想定して作られていないホール使用の困難さを、開演前にも彌勒さんが話されていましたが、歌舞伎から霊感を得た多くの工夫が凝らされた舞台でした。オペラと歌舞伎の共通項としてのスペクタクルな展開に注目して、エアリアルまで用いて観る者をも強烈に引き付けた彌勒さんの演出は好印象を残しました。
 外国人歌手の皆さんが、和式の衣装を違和感なく着こなしていたことも立派で、公演までの準備練習の熱心さが目に浮かぶほど。放送局のテレビカメラが入っていたので、放送で再度鑑賞できることも楽しみです。

歴史に詳しくなくても、描かれているのが人間の欲望や愛という身近なテーマで安心できるし、本当に面白い。演奏も歌手も物足りなさを全く感じないどころか、あの派手な歌舞伎風衣装に見劣りしない着こなしや身のこなし、見得を切るのもさまになっていてとにかくかっこいい。
少し前にジュリオ・チェーザレを観ていなければ行くことがなかったことを考えると、世界中を混乱させた新型コロナウィルスのおかげといえるかもしれません。
10月はヘンデルまつりを楽しみましたが、日本でバロックオペラがもっと上演されるようになってほしいです。

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