2024-03

2022・11・20(日)ジョナサン・ノット指揮東京響「サロメ」

       サントリーホール  2時

 好調のジョナサン・ノット&東京交響楽団のコンビによる演奏会形式オペラのシリーズ、今年はR・シュトラウスの「サロメ」である。コンサートマスターは水谷晃。

 主要歌手陣は、アスミク・グリゴリアン(S、サロメ)、トマス・トマソン(Br、預言者ヨカナーン)、ミカエル・ヴェイニウス(T、ヘロデ王)、ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー(Ms、ヘロディアス王妃)、岸浪愛学(T、衛兵隊長ナラボートおよびナザレ人2)、杉山由紀(Ms、小姓)。
 その他、大川博、狩野賢一、高田智士、升島唯博、吉田連、高橋圭、新津耕平、松井永太郎、渡邊仁美が出演している。

 これは、今年のベスト1有力候補と言ってもいいほどの演奏会だった。功績の第一は、もちろんジョナサン・ノットと東京交響楽団に帰すべきである。ノットの指揮する「サロメ」は、官能美とか頽廃美とかいった要素には若干不足するものの、ドラマとしての緊迫度においては、驚異的な水準に達しているだろう。
 東京交響楽団も文字通り獅子奮迅の演奏で、その燃焼度の高さは、国内のオーケストラの中ではおそらく随一の出来だったと評して過言ではあるまい。先日のショスタコーヴィチの「第4交響曲」に勝るとも劣らぬ見事な演奏ではあった。

 歌手陣も充実していた。タイトルロールのアスミク・グリゴリアンは期待を裏切らぬ素晴らしい歌唱で、彼女の描くサロメ像は決して好色でも淫靡でもなく、むしろ純な一途さを感じさせる若い女性━━といった雰囲気に感じられたのではないか。今や欧州のオペラ界では日の出の勢いにあると聞くが、魅力的な若い世代のソプラノの登場を喜びたい。

 ヘロデ王役のヴェイニウスは、あまり好色的な表現を採ってはいなかったが、演奏会形式としてはむしろこのあたりが好ましかろう。
 その他の人々も、みんな良かった。鈴木准の代役として急遽ナラボートを歌った岸浪愛学も、曲の冒頭を飾る大切な役柄で、完璧に責任を果たした。
 咆哮する大オーケストラに声がマスクされる個所も少なくはなかったが、この演奏会用配置では仕方のないところだったと思われる。

 演出監修には今回もトーマス・アレンが名を連ね(実際にカーテンコールにも現れた)ていたが、歌手は大体ステージ前面に位置する演奏会形式だから、その出入りに少し趣向を加えたのみの仕事にとどまっていたようだ。
 ただ、注目してもいい趣向と言えば、古井戸内のヨカナーンの歌を、舞台袖から歌わせるのではなく、オルガン下のP席の後方の上手側ドアの傍で聴かせるようにしたことと、彼を「7つのヴェールの踊り」の後の処刑の場までずっとそこに位置させたこと。これらは、このドラマの人間たちは終始ヨカナーンの圧力の影響下に置かれていることを暗示したのではないかと推測されたが━━。

 たった一つ、字幕について疑問を申し上げれば、全曲最後にヘロデ王が発する一言のところ。「この女を殺せ!」と表示されていたのだが、これはやはり「あの女を殺せ!」にすべきだった。何となれば、サロメは既に下手側袖に姿を消しており、ヘロデの目の前にいるのは王妃ヘロディアスただ1人だったからである。これでは、雰囲気がおかしくなる。もっとも、筋書はみんなが知っているところではあるが。

 カーテンコールは、空前の盛り上がりを見せた。我慢し切れなくなったブラヴォーの声が、掟を破って盛んに飛んでいた。
 ノットと東京響の次回のこのシリーズは、来年5月のR・シュトラウスの「エレクトラ」とのこと。今の調子で行けば、来年の成功は約束されたも同然だろう。

コメント

コジ・ファン・トゥッテから始まったJ.ノットの演奏会形式オペラでも最高の素晴らしい公演。最初から最後まで弛緩したところなく、R.シュトラウスの壮大かつ精妙緻密の響きを堪能した。18日の公演で感激、もう一度聴きたいと急遽20日のSHも聴いた。サロメ役、A.グリゴリアン、大編成のオケをバックに、2階席センターへも突き抜ける声で、演奏会形式でもサロメになりきり、特にヨカナーの首を持っての場面にはゾクゾクした。歌唱、容姿、演奏会形式でも分かる演技力、総合的に、今最高のサロメ歌手と言われることが実感出来た。ヨカナーンは、サロメに対峙してクッキリとその情念、恋心をそそった、冷静かつ説得力ある歌唱、ヘロデ王、ヘロデイアスも役割性格をそれぞれ良くわかった、主要4人の水準の高さに大満足。急遽代役の岸浪も健闘して、十分カバーしていた。来年5月のエレクトラも期待したい。

Salome

いやはや、またやってくれましたね、ノットと東響。DSCH4番に続き、スマッシュヒット! 今年の残りのコンサート・スケジュールを見ると、間違いなく2022年の国内オケ、私的ベスト・コンサートに確定です。演奏に関しては、プロの評論家様に屋上屋を重ねることはしませんが、ステージ演出はちょっと慎ましやかだった、というか、あまり主張の感じられるものではありませんでした。

一番気になったのは、ヨカナーンの「首」の扱い。赤い布地を丸めたのが「それ」を表していたのですが、それに接吻したり語りかけるという演出ではなく、サロメは何となくその布地を手にしているだけという素振りが、このシーンの「おぞましさ」を薄めていると感じました。最後にはその布地を肩から羽織り、黒いサロメが赤くなる、という部分は興味深かったのですが。

ともあれ、皆さまとおそらく同様に、来年の「エレクトラ」が待ちきれません。

グリゴリアン♡!

ミューザ川崎公演を拝聴。初日だったせいか、最初は少し固いところがあり、一か所、ヨカナーン役が出を間違えたように思われたほか、オケも陶酔的・官能的な響きという点で少し物足らない感じがあったのですが、それでもきわめてレベルの高い公演となりました。とにかく外国人歌手のスケール大きな歌唱、とりわけグリゴリアンの世界最高のサロメに圧倒されましたが、サントリーホール公演ではさらに完成度の高い演奏となったことでしょう。

ところで、話はまったく変わるのですが・・・。

あまり東条先生のお宅の庭先で世間話に興じるつもりはないのですが、最近、首都圏の一部オケの間で終演後のカーテンコールのみ自席からの撮影を解禁する動きが拡がっているようです(今回のサロメでも撮影OKとのアナウンスが流れました)。あれは一体どういう理屈なんでしょう。

終演後であれ、演奏中であれ、肖像権の侵害は成立するのでしょうし、出演者から個別に了解を得ているのであれば、前半終了時のソリストのカーテンコールも撮影させてほしいところですが、なぜか前半終了時の撮影は認められない。

一方、顔写真などの識別データは個人情報として保護されるべきものではないかと。少し前から、ピース画像をSNSにアップすることの危険性(指紋認証データとして悪用されるリスク)が指摘されていますが、ウクライナ軍は顔認識機能搭載のドローンを飛ばしてロシア軍将校を狙い撃ちしているとの情報すらある昨今、終演後のみとはいえ、出演者の撮影とその画像のSNSでの拡散を無制限に認める(勧奨・奨励する?)というのはなんか無節操な感じが否めません。

SNSにアップされ、バズることを狙ってこのようなことをやっているのでしょうが、なんか演奏家の権利侵害を惹起しかねない、危うい対応のようにも思われます。はたしてそこまでやる必要があるのか、今は殆どの音楽家がSNSで自らの画像を発信している中、SNS音痴の小生の的外れな意見かもしれず、さらにN響はテレビ録画・放映があるので、異なる権利関係が成立しているのかもしれませんが、読者諸賢各位のご教示・ご叱正をいただければ幸いであります。

これだけ評判になり続けているコンビなのに、翌週のコンサートの入りは、5割。なんでこんなにお客さん少ないの?

演奏会形式によるベスト公演

ジョナサン・ノット&東京交響楽団による演奏会形式オペラは、これまですべての演目を鑑賞していますが、本当に期待を裏切られることがありません。今回の「サロメ」は中でも突出した出来でした。ノットさんのオペラは、作品の深い読み取りの中から導かれた実に見事なもので、下手な演出に邪魔されることもなく、演奏会形式による公演のメリットを最大限に発揮していました。演奏会形式の良さをまだ知らない方がいましたら、是非ご覧になっていただきたいほど。オペラは舞台を見る楽しみもありますが、音楽があってこその舞台だと思います。演奏会の客入りの少なさとのギャップのご指摘をしている方が、この日の演奏を聴いていたならば、多分その理由がお分かりになるはずです。次回の「エレクトラ」もすごい演奏が期待されます。

以前、出張で、予定したオペラに行けなくなり、女性に行って貰おうとしたら、2人手を挙げてくれました。2人ともクラシックコンサートなど行ったこともない人でしたが、何か面白いものが見れそうと思ったようです。これは意外性があったからですが、何かしら興味を引く売り方をしなければ、一般の人に、サロメだエレクトラだと言っても、何それ?と言われるだけでしょう。ファンもそうだが、凄いんだから聴け、では嫌がられるだけでしょう。東響に限らずネームヴァリューもないオケが多い中での売り方は、更なる工夫が必要だと思います。カティンに頼らずに。

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聴きに行きたいのですが、チケット代が高過ぎますね。東京や川崎までの新幹線代を加えると、年に何度も脚を運べません。このままでは、本当に地方在住のファンが東京のコンサートを聴けなくなってしまいます。東京の楽団には何とかチケット代を値下げしてほしいです。

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