2024-03

2022・11・28(月)METライブビューイング ケルビーニ:「メデア」

       東劇  6時30分

 「METライブビューイング2022~23」の第1弾、ケルビーニの「メデア」を観る。これはメトロポリタン・オペラ(MET)の今シーズンの開幕公演(9月27日)に選ばれた作品で、MET初演でもあった。今回の配信で使われた映像はその10月22日の公演のものである。

 出演は、ソンドラ・ラドヴァノフスキ(S、コルキスの王女メデア)、マシュー・ポレンザーニ(T、アルゴー号の英雄ジャゾーネ)、ミケーレ・ペルトゥージ(Bs、コリントの王クレオンテ)、ジャナイ・ブルーガー(S、その娘グラウチェ)、エカテリーナ・グバノヴァ(Ms、メデアの友人ネリス)他。カルロ・リッツィ指揮のメトロポリタン・オペラ管弦楽団&合唱団。演出と美術はデイヴィッド・マクヴィカーだ。

 ケルビーニの「メデア」といえば、今なお伝説的なマリア・カラスの名声に覆われたオペラと言えよう。カラスは確かにこのオペラの蘇演の功績者だったが、しかし皮肉な見方をすれば、その「伝説」ゆえにこのオペラを再び封印させてしまったという責任も負うことにもなるだろう。
 いや、実際にはカラスの責任ではなく、要するにこの凄まじいパワーを要求される役柄を歌い演じ、カラスの伝説を払拭することのできるソプラノ歌手が、なかなかいなかった、ということにもなるのだが━━。

 そのメデアなる女性、全篇ほぼ出ずっぱりで強烈な歌と演技を続け、しかも第3幕ではいよいよ凄まじい個性を発揮しなくてはならぬメデアを今回歌い演じたのは、ラドヴァノフスキだった。よくやったと思う。文字通り体当たり的な熱演だった。
 このステージでは、冒頭から復讐一辺倒の、やや怪女的なメデアとして表現されており、もう一つの側面たる「苦悩する母親」としての表現は犠牲にされていたという傾向も感じられるが、これはマクヴィカ―の演出意図に応じたものであろう。

 他の歌手陣も、ネリス役のグバノヴァに至るまで見事な顔ぶれが揃っており、しかもカルロ・リッツィが今回は珍しく迫力に富む指揮だったので、この作品の良さ、凄さは、充分に再現されていたと思われる。

 なお、そのマクヴィカ―の演出&装置だが、舞台では後景の巨大な鏡を効果的に使って人物の動きを立体的に、量感たっぷり、幻想的に見せて成功を収めていた。メデアが2人の子供を殺すシーンはさすがに見せなかったが、彼女が猛毒を仕込んで贈った王冠と衣を身に着けたグラウチェが恐ろしい姿になる惨劇を背景に見せて、メデアの惨忍さを強調するといった趣向は凝らしていた。

 ただ、そのメデアに不気味なアイ・メイクを施し、いかにもモンスター的な女に見せてしまったのは、論議を呼ぶところだろう。たしかに彼女は「復讐に狂う女」ではあるが、「悩める母親」との性格も備えており、その狭間で自ら苦悩する女性でもあるのだから、その辺は何とも微妙なところではある。

 それにしてもこれは、全く物凄いオペラである。フランス革命を機に貴族社会から一般市民に解放されたオペラは、1797年にはすでにこういう血腥い作品を生み出すに至ったのだ。それが興味深い。
 10分の休憩時間を挟み、上映時間は3時間6分。

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