2024-03

2023・1・7(土)山田和樹&読響、ポゴレリッチ

       東京芸術劇場 コンサートホール  2時

 読売日本交響楽団のマチネーシリーズを、同団首席客演指揮者の山田和樹が指揮。しかもゲスト・ソリストが怪人(?)イーヴォ・ポゴレリッチということで、客席は満杯となった。
 演奏されたのは、チャイコフスキーの「眠りの森の美女」の「ワルツ」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」、そしてチャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」。

 ポゴレリッチが弾くのはプロコフィエフの「3番」━━と当初は発表されていたが、それがラフマニノフの「2番」に変更された。この曲は、ポゴレリチとしては以前にも読響と演奏している(☞2016年12月13日)ので、またかという感もあったのだが、こうしてもう一度聴いてみると、やはり物凄い。

 前回同様、冒頭のソロにしても、突然最強音に爆発した瞬間の、鋭い刀で切り込むような凄絶で悪魔のような音色は、やはりポゴレリチでなければ出せないものだろう。このギラギラした不気味な魔性の演奏は全曲にわたって続いて行くので、曲の随所にあふれていた甘美さなどは全く消し去られ、地獄の妖光に包まれたラフマニノフ、といったイメージの音楽が放射される。
 こうした演奏は決して愉しいものではないが、しかし「惡の華」ともいうべき不思議な魅力があることは確かで、聴いていると、一種の被虐的な快感に引き込まれてしまうというわけだ。

 そのポゴレリッチのピアノに呼応して、山田和樹が読響を猛烈に煽り立てるので、音楽はいっそう凄まじくなる。ただ、これはしかし、ポゴレリッチの注文によるものだろう。2016年の読響との協演の際に指揮を受け持っていたカエターニも、ポゴレリッチから「もっと(オケを)鳴らせ、鳴らせ」と言われた、という話を読響から聞いたことがある。

 プログラム後半の「マンフレッド交響曲」では、その山田和樹の指揮の巧みさに舌を巻かされた。チャイコフスキーの音楽に本来備わっている「持って行き方の巧さ」を最大限に再現した見事さもさることながら、音楽をどれほど咆哮させても、それが機械的な大音響といったものにならず、この曲特有の白夜的な寂寥感━━何か独りよがりの表現になってしまうのだが━━というか、主人公マンフレッドの空しい孤独感といったらいいのか、そうした情感を常に漂わせている演奏のように、私には感じられたのである。

 山田和樹は、本当に素晴らしい指揮者になった。読響がまためっぽう上手いので、演奏がいっそう映える。凡庸な演奏では「変な曲」と思われかねないこの「マンフレッド交響曲」も、きょうのヤマカズ&読響の演奏のように再現されると、すこぶる魅力的な作品となるだろう。

 ただ、今日はスヴェトラーノフ版━━と称される━━が使用され、第4楽章で大幅なカットが行われたことと、全曲の最後に第1楽章の激しいエンディングが再び使用されたことには、あまり賛成できない。特に後者は全くの俗受け効果を狙った愚挙ともいうべく、標題音楽としての進行の上でも意味を成さぬ構成と言えよう。

コメント

マンフレッド交響曲

このホールはオルガンを使う時は反響板をたたむせいか、オーケストラの音がとても金属的に響き、楽しめません。少なくとも2階センターの我々の席ではそう感じます。先月の第九も鈴木優人氏がオルガン演奏を披露したので同様のセッティングになっており、読響の音色とは思えぬ音質でした。コーラスが入場してからは、若干は改善しましたが。
今回もマンフレッドと聞いて心配していたのですが、会場に着いてみたらオルガンのない版であることが分かり、本来の読響の素晴らしい演奏を心地よく楽しめました。ポゴレリッチ氏のラフマニノフは、とても新鮮で感動しました。

1/8を鑑賞。
ポゴレリッチ:この人を聴くのは初めてですが、速い箇所は遅く、遅い箇所は速く、強弱は通常の真逆、時に耳に触る高音。通常のラフマニノフ演奏とあまりにかけ離れていて、全く楽しめませんでした(スリリングはスリリング)。オケに合わせる気は全くなし。演奏終了後、椅子を足でピアノの下に押し込み(アンコールはありませんよの意思表示)、コンマスとの握手も無かったよう。指もあまり回らない様子。昔からこの人の実演を聴いてきた人にとっては、感興に富んだ演奏であったのかもしれませんが…。
チャイコフスキー:繊細かつ豪快な演奏で読響が底力を発揮!弦楽器のアンサンブルも見事でしたが、ホルンは完璧。山田さんの指揮も緩急自在で言うことなし。

読売日本交響楽団 演奏会評

面白い演奏会でした。ポゴレリッチは楽譜持参。ブージー&ホークスの2台のピアノ版。譜めくりさん付きでのラフマニノフ2番のコンチェルトは初めて。独奏が無いときは自分でオーケストラピアノ編曲の部分を見て自分で譜めくり。
演奏は個性的で音楽性どうのこうのより、自分のアゴーギグで演奏するものだからオケが大変。和樹様が時々オケでなく、ポゴレリッチの方に向かって指揮棒振っていたのも笑えました。でも必死にオケは合わす、合わす。
数年前あるアルゲリッチの代役で協奏曲共演したデュトワが、終演後、差し出したポゴレリッチの手に一切触れようとしなかったことが報じられていましたが、気持ちがよくわかります。
よくぞ和樹様、併せていらっしゃいました。お疲れ様でした。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中