2024-03

2023・1・19(木)山田和樹指揮読響 「アルプス交響曲」他

      サントリーホール  7時

 1月の「ヤマカズ&読響の三貫盛」の3つめがこの1月定期。矢代秋雄の「交響曲」と、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」。これまた超重量級プログラムで、しかも聴き応え充分であった。コンサートマスターは長原幸太。

 山田和樹が、日本の先人作曲家たちの優れた作品を「再発見」させるプログラミングを志向していることは、讃えられてしかるべきであろう。この矢代秋雄(1929~1976)の「交響曲」(1958年作曲・初演)も同様、今日の演奏技術の優秀なオーケストラにより再現されると、その作品の素晴らしさが再認識され、作曲者への再評価にも好影響を与えると思われる。
 今日の山田和樹と読響による演奏も━━私自身の感覚で言えば、昔聴いた時に比べて「こんなに見事な管弦楽法で、こんなにいい曲だったのか」と感嘆させられるほど、手応えのあるものであった。

 なお、この曲の第2楽章で「テンヤ、テンヤ、テンテンヤ、テンヤ」というリズムが何度となく登場するが、これが獅子文六の小説「自由学校」に出て来る「バカ・バヤシ」から発想されたものであることは、私も以前から承知していた。
 もっとも今日、隣席にいた音楽学者の沼野雄司さんの話では、彼が別の機会に解説を書く際に原作を照合した際、小説にはこの曲と同じリズムのハヤシは出て来ないのだ、という。ちゃんと原典に当たるとは、さすが沼野さん、偉いものだと敬意を払った次第だが━━実は私もこの小説を読んでいた(それどころか、これが最初に新聞に連載された際のことも、うろ覚えながら記憶にある)にもかかわらず、リズムのことについては正確には記憶していなかった。帰宅して文庫本の原作を調べてみると、なるほど小説の中に出て来るバカ・バヤシでは、「テンテンヤ、テンテンヤ、スケテンテン」程度のものにしかなっていない。従って、前出の交響曲におけるリズムは、小説に触発されたとはいえ、やはり矢代秋雄の独自の展開によるものだったのである。

 いっぽう、後半の「アルプス交響曲」は、これも山田和樹の劇的構成の巧みさと、読響の腕の良さが余すところなく発揮された快演と言えたであろう。読響も最初のうちは些か粗っぽかったが、「牧場」を過ぎて「危険な瞬間」に至るあたりから響きに濃密さを取り戻し、「頂上にて」以降は見事なアンサンブルを発揮した。
 山田和樹の指揮も同様、「危険な瞬間」や「霧が立つ」「日が陰る」や、あるいは「嵐の前の静けさ」での息詰まるような緊迫感のつくり方は、全く巧いものだった。ドラマティックな、スペクタクルな音楽の演出という点では、先頃のネルソンス&ボストンの演奏を凌ぐものだったのではなかろうか。
 ヤマカズ&読響、今回も私たちの期待を裏切らなかった。

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