2024-02

2023・2・16(木)METライブビューイング「めぐり合う時間たち」

      東劇  6時30分

 マイケル・カニンガムの小説をグレッグ・ピアスが台本化、ケヴィン・プッツが作曲したこの新作オペラ「めぐり合う時間たち(The Hours)」は、ルネ・フレミング、ジョイス・ディドナート、ケリー・オハラという3人の大ソプラノが共演することもあって、今シーズンのMETのイチオシらしく、いろいろな関係印刷物にこの3人が並んでいる写真が見られる。
 今回上映されているのは、昨年12月10日に上演されたライヴ映像だ。ヤニック・ネゼ=セガンが指揮を、フェリム・マクダーモットが演出を受け持っている。

 ストーリーは━━極度に簡略化して言ってしまえば━━1923年の英国、1949年のロサンゼルス、1999年のニューヨークに生きる3人の女性のそれぞれの波乱の1日が同一平面上で同時に描かれる、という形のものである。だから何なのだ、ということにもなるが、この3人が全曲の最後に顔を揃え、時空を超えたそれぞれの生き方を確認しあうというヒューマンな場面で締め括られるというところに、この作品の眼目があるのだろう。

 このオペラの制作に携わった人たちは、そのドラマ構成の巧みさと、その各々の時代に関連する音楽(例えば1999年の時代はミニマル・ミュージック)を取り入れた手法の見事さなどを口々に語っている。ただ、彼らの並外れた熱意には敬意を払うものの、実際にそれが本当に舞台上で明確に構成され、音楽で描かれていたかとなると━━必ずしもそうとは言い難いように思われる。

 第1幕が約88分、第2幕が約61分という上演時間の中で、オーケストラと歌は概して同じような流れを以って進み、クライマックスのつくり方においても、オーケストラが網の目のように織り成す音を次第に精緻に激しく濃く発展させて行く(例えば第1幕の終結個所)手法のみなので、全体に些か単調に感じられる、と言えなくもないのだ。

 歌手陣は相変わらず素晴らしいし、METのオーケストラも相変わらず上手い。
 「芸術を発展させるためには、新作に取り組まねばなりません」と冒頭でピーター・ゲルブ総裁が語っているように、近年のMETのシーズンには新作の初演が増えている。見上げた姿勢である。

コメント

グラス

The Hoursの映画をご覧になっているのか文章からは分かりませんが,アメリカでこのオペラを観る観客は誰もがフィリップ・グラスが付けた映画版のミニマルミュージックと併せて思い出すものです。映画ですと映像により単調さがやや緩和されますが,ストーリー上どうしても音楽が一貫していなければ異時代での連続性・関連性が確保できませんので,舞台ではグラスとの音楽の違いも含め,どうしても集中の継続が難しいものになりますね。

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