2024-03

2023・2・23(木)東京二期会「トゥーランドット」初日

       東京文化会館大ホール  6時

 東京二期会の今回のプッチーニの「トゥーランドット」は、ジュネーヴ大劇場との共同制作によるダニエル・クレーマー演出によるものだが、最大の特徴は、ステージデザインを創造集団チームラボの「チームラボアーキテクツteamLab★Architects」が受け持っていることと、第3幕後半が通常の華やかなアルファーノ版でなく、比較的静かなルチアーノ・ベリオ版で演奏されることだろう。

 4回公演の今日は初日。ディエゴ・マテウスの指揮、ピットは新日本フィルハーモニー交響楽団。
 歌手陣はダブルキャストで、今日は田崎尚美(中国の姫トゥーランドット)、樋口達哉(だったんの王子カラフ)、竹多倫子(奴隷女リュー)、ジョン・ハオ(カラフの父ティムール)、牧川修一(中国皇帝アルトゥム)、小林啓倫(大臣ピン)、児玉和弘(大臣パン)、新海康仁(大臣ポン)、増原英也(役人)。それに二期会合唱団とNHK東京児童合唱団、多くのダンサーたち。照明にはシモン・トロッテ、振付にはティム・クレイドンの名がクレジットされている。

 「光と影のトゥーランドット」━━いや「光と闇のトゥーランドット」というべきか、レーザー光線を交えた光の乱舞による舞台がまず見ものだ。かつて「ニーベルングの指環」の舞台で名を轟かせたラ・フラ・デルス・バウスのそれに勝るとも劣らぬ大がかりな目映い光の演出で、しかも更に精緻なつくりである。
 見事なものではあるが、一方それに眼が奪われてしまうと、前景の暗闇の中で行われている主人公たちの存在が定かでなくなるという傾向がなくもないだろう。幕開き直後など、カラフやティムールやリューは、声はすれども何処にいるの?という感だったことは確かだ。
 ただ、それも一種の慣れというか、第2幕以降では次第に主人公たちの存在も認識できるようにはなって行く。

 皇帝やトゥーランドットは舞台の天井近くに登場し、輝かしい光を受けた高所で歌うので(怖いでしょうねえ)存在感は明確だが、カラフは大部分を暗い地上で歌うので、客席後方で観ていると、人相風体も定かならずという感がある。なお「謎解きの場」で、カラフが一つの謎を解破するごとに、トゥーランドットの乗ったゴンドラ(?)が高所から地上に向け次第に引き下ろされて来るという設定は、解りやすい仕組みだろう。

 これに対し第3幕では、リューとティムールがそれぞれ空中の透明なゴンドラの中に閉じ込められていて、地上でカラフが酷い拷問に遭うという設定に読み替えられているが、これはあまり納得できる解釈とも言えない。だが自決したリューと、それを追って自らも命を絶つティムールのゴンドラが赤い光に染まって行くという設定は無惨ながらも美しいものがあった。

 舞台で目立ったのはもう一つ、強烈なダンスだ。第1幕の幕開きからそれは舞台を圧する勢いで繰り広げられ、第3幕前半に至るまで、群衆や戦士、処刑人などの役割を以て激しく展開されて行く。
 その迫力もなかなかのものだが、しかしこれも、物語の主人公たちの存在を目立たなくしてしまう傾向無きにしも非ずだ。ドラマの真の主人公は群衆にあるという論拠は、このオペラでは成り立たないだろう。その群衆役の合唱団は舞台奥の暗黒の中に位置したままなので、われわれ観客の眼には触れることがない。

 オーケストラはめずらしく新日本フィルが受け持ったが、音にもう少し厚みが欲しいところではある。2日目以降にはもっと演奏にしなやかさが生まれて来るかもしれない。

 歌手陣は大熱演だったが、いずれも何となく力み過ぎといった印象があり━━田崎尚美さんなど、昨年のゼンタ(新国立劇場)、クンドリ(びわ湖ホールと東京二期会公演と)をはじめとするこれまでのワーグナーものでの彼女の快唱を聴いて来た側からすると、今日は些か彼女らしからぬ歌い方としか思えなかったほどである。だが一方、樋口達哉テナーが、こういうドラマティックな歌を聴かせてくれたというのは、私には嬉しい驚きであった。

 つい先日、日本オペラ協会(藤原歌劇団系)が壮麗な演出の「源氏物語」を上演して気を吐けば、東京二期会は、日本ではこれまでなかったような舞台の「トゥーランドット」で応戦する。先月には東京芸術劇場も関西弁の字幕と文楽にヒントを得た奇想天外な「カヴァレリア・ルスティカーナ」&「道化師」を試みたばかり。あらゆる新機軸は進歩に通じる。今後も議論を巻き起こしていただきたい。

コメント

トゥーランドットという作品の魅力からなのか、様々な斬新な演出が多くあって、楽しめるオペラだと思います。ソフィア歌劇場、フィレンツェ歌劇場、Bunkamura主催(宮本亜門演出)、新国立劇場等など個性的な演出が多く、都度楽しめる作品だと思います。
ダンスパフォーマンスも先日のカヴァレリア・ルスティカーナ、道化師よりも、登場人物と一致する動きであり、非常に分かりやすい。字幕も通常の構成であり、その分音楽に集中できる。
舞台装置、演出も音楽との効果と相まってとても映える。

補筆部分のベリオ版はより緻密な音楽であるため面白い。
ただ最後、『お前の名前が分かった』『それは、愛』の部分に関して、それが音楽面からなのか、演出面からなのかは分からないが、余りにもさらっとしすぎると感じた。淡々と進むところに多少の物足りなさを感じた。
アルファーノ版の『それは、・・・愛です!』とそこにクライマックスを持っていく手法と異なる点が物足りなく感じたのは、アルファーノ版を聴き慣れているせいなのかも知れない。

(2月25日、二組目の公演)

訂正
公演鑑賞日 2月24日(金)

誤)2月25日 
    ↓
正)2月24日

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