2023・3・29(水)小泉和裕と名古屋フィルの東京公演
東京オペラシティ コンサートホール 7時
小泉和裕は、2016年4月から務めていた名フィル音楽監督の任期をこの3月で閉じるが、その最終演奏会が、この東京公演となった。
今日、彼が指揮したのは、ベートーヴェンの「交響曲第1番」と「交響曲第3番《英雄》」。シンフォニーをちゃんと演奏できるオーケストラにしたい、ということをシェフとしての旗印に掲げていたマエストロ小泉。今日の演奏はまさにその理想を実現させたという感のある、見事なものだった。
特に「英雄交響曲」は、真摯な力と、揺るぎない構築性と、豊かな感情とを備えた、稀有な演奏だったのではないか。第1楽章の再現部あたりから音楽はみるみる力を増し、第2楽章のミノーレ個所での昂揚は壮大を極めた。この「葬送行進曲」がこれほど深い感情をこめて演奏されたのを、少なくともこの30年来の日本の指揮者とオーケストラからは、私は聴いたことがない。
彼の指揮を聴き始めて今年で48年になるけれども、聴いた範囲で言えば、この「英雄」は、その中で最高の演奏だったと断定したい。おそらく彼自身にとっても、最高のものに属するのではなかろうか。
荒井英治をコンサートマスターとした名古屋フィルの演奏が、また素晴らしかった。アンサンブル全体の均衡も卓越していたし、3本のホルン(首席・安土真弓)も完璧で、第4楽章最後のクライマックスでの演奏などは壮烈な力に満ちた。
弦楽器群の豊かでしっとりした響き━━これは昔から小泉和裕のお家芸だったが━━もよく、中低弦の内声部の動きも明晰そのもの、ベートーヴェンの管弦楽法における見事な音の精妙な絡み合いの面白さを、改めて示してくれたと言えるだろう。私がこれまで聴いて来た名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏の中でも、これはベストの出来である。
━━何だか手放しの礼賛みたいで、少々照れるけれども、しかし私は本当に、今日の演奏には感心したのである。
小泉和裕は、2016年4月から務めていた名フィル音楽監督の任期をこの3月で閉じるが、その最終演奏会が、この東京公演となった。
今日、彼が指揮したのは、ベートーヴェンの「交響曲第1番」と「交響曲第3番《英雄》」。シンフォニーをちゃんと演奏できるオーケストラにしたい、ということをシェフとしての旗印に掲げていたマエストロ小泉。今日の演奏はまさにその理想を実現させたという感のある、見事なものだった。
特に「英雄交響曲」は、真摯な力と、揺るぎない構築性と、豊かな感情とを備えた、稀有な演奏だったのではないか。第1楽章の再現部あたりから音楽はみるみる力を増し、第2楽章のミノーレ個所での昂揚は壮大を極めた。この「葬送行進曲」がこれほど深い感情をこめて演奏されたのを、少なくともこの30年来の日本の指揮者とオーケストラからは、私は聴いたことがない。
彼の指揮を聴き始めて今年で48年になるけれども、聴いた範囲で言えば、この「英雄」は、その中で最高の演奏だったと断定したい。おそらく彼自身にとっても、最高のものに属するのではなかろうか。
荒井英治をコンサートマスターとした名古屋フィルの演奏が、また素晴らしかった。アンサンブル全体の均衡も卓越していたし、3本のホルン(首席・安土真弓)も完璧で、第4楽章最後のクライマックスでの演奏などは壮烈な力に満ちた。
弦楽器群の豊かでしっとりした響き━━これは昔から小泉和裕のお家芸だったが━━もよく、中低弦の内声部の動きも明晰そのもの、ベートーヴェンの管弦楽法における見事な音の精妙な絡み合いの面白さを、改めて示してくれたと言えるだろう。私がこれまで聴いて来た名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏の中でも、これはベストの出来である。
━━何だか手放しの礼賛みたいで、少々照れるけれども、しかし私は本当に、今日の演奏には感心したのである。
コメント
大賛成
名コンビ
昨年の初夏に、このコンビでジュピターとアルプス交響曲を本拠地、愛芸のコンサートホールで聴きました。満座のホールの中、両曲にふさわしい、神々しいという言葉がよく合う壮大な演奏でした。アルプスの方はCD化されているようですので、私も遅ればせながら、購入したいと思っています。
実は3月はコバケン日本フィルの英雄もあり、畳み掛けない分風格はこちらの方があったし、コバケン御自身も人生最高とか言われてたんですけど、各楽器の発色や意欲的な表情が小泉さんと名古屋フィルに分がある(笑)。私自身の人生最高は今回の小泉さんになると思います。