2024-03

2023・3・30(木)東京・春・音楽祭 ムーティ指揮「仮面舞踏会」

      東京文化会館大ホール  6時30分

 今年の呼び物の一つ、リッカルド・ムーティが東京春祭オーケストラを指揮したヴェルディの「仮面舞踏会」(演奏会形式上演)。

 声楽陣は以下の通り━━アゼル・ザダ(リッカルド)、ジョイス・エル=コーリー(アメーリア)、セルバン・ヴァシレ(レナート)、ユリア・マトーキチュキナ(ウルリカ)、ダミアナ・ミッツィ(オスカル)、畠山茂(トム)、山下浩司(サムエル)、大西宇宙(水夫)、志田雄二(判事)、塚田堂琉(召使)、東京オペラシンガーズ。

 昨年の神がかり的演奏の「マクベス」に続くムーティのヴェルディものだけに、大きな期待を集めた公演だった。その期待に違わず大ムーティさまは、長原幸太をコンサートマスターとした東京春祭オーケストラから、今回も素晴らしく表情に富んだ演奏を引き出してくれた。

 深夜の処刑場に独り立つアメーリアが恐ろしい幻想に怯える瞬間の音楽、あるいは占師ウルリカがリッカルドに恐ろしい預言を与える個所の音楽、レナートらがリッカルド暗殺の籤を引き合う個所の音楽などが、これほどまでに凄愴な最強奏で響いた例を私はかつて聴いたことがない。
 また前掲の場面、深夜に2人で顔を合わせたリッカルドとアメーリアが秘かに視線を交わすさまを描くような緊迫感に満ちた最弱音なども、ここまで神経を行き届かせて演奏されたのは初めて聴いた。
 ヴェルディのオペラのオーケストラがかくも表情豊かで描写にも優れているという証し━━これは歌劇場のオケ・ピットでルーティン的に処理された演奏からは、どうしても望めないものだ。

 これで主役歌手陣が完璧だったなら、と惜しまれてならない。
 リッカルド役のザダは途中から調子を上げて行ったものの、総じて高音域が苦しく、声量や声の風格から言っても、ボストンの総督(原典版だったらスウェーデン国王なのだから)としては頼りない感じで、さしづめどこかのボンボン社長といった雰囲気だろう。
 更に疑問が大きかったのはアメーリア役のエル=コーリーで、最初の方では高音が苦しく、ハラハラさせられた。ところが第2幕のアリアになると、中低域の声をたっぷりと響かせるのである。つまり高音域があまり得意でないメゾ・ソプラノという感なのであり、これではアメーリアの役柄には向くまい(それでも、かのトスカニーニのライヴ盤でこの役を歌っているソプラノよりは未だマシかもしれない)。
 結局、2人ともミスキャストだった、ということであろう。

 レナート役のヴァシレは、第3幕の聴かせどころのアリアで本領を発揮した。だが今日の主役歌手陣で見事だったのは、第一に占師ウルリカを不気味に歌ったマトーチュキナと、次いでは小姓オスカルを軽快に歌ったミッツィであろう。この2人がいなかったら、今日の音楽ドラマは些か寂しくなっていたに違いない。
 東京オペラシンガーズは人数も多く、音量的にも強力過ぎるくらいに感じられたが、それだけに全曲の幕切れ場面で最弱音から最強音にクレッシェンドして行く劇的な音楽の個所では、オーケストラとともに威力を発揮していたことは確かである。

 それにしても、こういう物凄い、恐ろしいクレッシェンドとフォルティッシモが日本のオーケストラで出せるなら、どうしてもっと普段の演奏で出してくれないのだろう? 大きな音ならいいというわけではないが、音楽には、身の毛のよだつような瞬間が必要な場合もあるのだから。

コメント

30日に聴いた。昨年に続き、Verdiの音楽劇の神髄、素晴らしさが展開された、Mutiの指揮恐るべし。指揮棒一閃、情景が変り、震え怒り感情が溢れ出す、本当に凄い演奏会でした。若手中心の春オケのメンバーは演奏後満足そうに笑顔が印象的、十分な集中力でやり切った思いが伝わった。
歌手については、東條さんのご意見に賛同、リッカルド役は本人も不出来を承知してカーテンコールでもサッと礼をして袖に引き下がった。ウルカリのおどろおどろしい声が腹に響いた、盛大な拍手とブラボーも頷ける。Mutiは高齢になってきたが、元気な指揮ぶりであり、来年の公演も期待したい。

ムーティは春祭の初回の「リゴレット」の時に「一度だけでもムーティを!」と思って聞いて以来です(私は3/28)。
歌手(特にレナート役とウルリカ役)、オーケストラ、合唱ともに素晴らしい公演でした。
臨時編成のオケでも前に記憶がある奏者がいて3度めということでアンサンブルはより密になっているのでしょう。
弦楽器群は素晴らしいまとまりとヴェルディでは聞いたことがない力強さでした。その中でも印象深いのが3幕のチェロソロです。
私の席はチェロの表板が見えない場所でしたが、文化会館に朗々と響く美しい音色に感動しました。終演後ムーティがコンマスの次に握手に行ったのは当然と思いました。中木健二さんに再度拍手を!
そしてムーティの厳しい要求に応えてのことと思いますが、ティンパニがダイナミックで素晴らしかった。
リゴレットの時とは違い完全全曲でしたので来年にも期待します。

28日に聴きました。
どうも気になったのは指揮者とオケに挟まれたソリストの立ち位置です。
私の座った場所からはリッカルド役のアゼル・ザダがムーティ様の背中に邪魔(?)されてほとんど見えません。そればかりか声もしっかり届きませんでした。
多分1階の平土間席ではどこに座っても誰か一人見えなかったのでは。
演奏が超弩級戦艦だっただけにそれがなんとも残念です。
2年前の「マクベス」ではそんな不満はなかったと記憶してますが、あの時はどんな並びでしたっけ・・・はて?

仮面舞踏会

28日に劇場に行きました。あまりに劇的な音楽に衝撃を受けました。
ムーティの作り出すすばらしい音楽に魅了されました。また日本の音楽家も
いい意味で表現的で感銘いたしました。歌い手については東条先生並びに
諸氏のご指摘通りだと思いますが、私にはどの人も十分な歌唱でした。
名演に酔いしれた桜の花の咲く上野でした。

30日にはインターネットで視聴させていただきまhした。ムーティの指揮振りに大きな感銘を受け、また演奏者の皆様が笑顔にあふれていて嬉しかったです。私には、フルートの小山さんの紡ぐ音楽が魅力的でした。
いずれにしろ、こんな大音楽会に行けて、また視聴できて幸せです。

地方に住んでいるので、土曜日にブラームスのレクイエムを配信で聞かせて
いただくのを楽しみにしております。

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