2024-03

2023・4・1(土)東京・春・音楽祭 若い音楽家による「仮面舞踏会」

       東京文化会館大ホール  7時

 リッカルド・ムーティの指導による「若い音楽家たち」によるヴェルディの「仮面舞踏会」の演奏会形式での全曲上演。
 歌手陣はすべて日本勢で、石井基幾(リッカルド)、吉田珠代(アメーリア)、青山貴(レナート)、中島郁子(ウルリカ)、中畑有美子(オスカル)が主役陣を歌う。脇役たちはムーティ指揮の公演(☞3月30日の項)とすべて同一。東京春祭オーケストラと東京オペラシンガーズも、同じ編成でステージに乗っていた。

 「若い音楽家」と言っても、例年のことながら、これはどうやら歌手陣のことではなく、指揮者を意味するもののようである。今回はムーティの教えを受けた4人の若い指揮者が、全曲を分担して指揮していた。
 4人とは、澤村杏太郎、アンドレアス・オッテンザマー(何とあのベルリン・フィルの首席クラリネット奏者)、レナート・ウィス、マグダレーナ・クライン(以上登場順)。御大ムーティは、客席からの大拍手を浴びて1階最前列に座り、ステージを見守っていた。

 大ムーティのあの鮮烈で劇的な指揮による「仮面舞踏会」を聴いたあとで、今日の若い指揮者たちによるこの曲を聴くと、全く違った作品のように感じられてしまうが、無理もなかろう。それは長原幸太率いる東京春祭オーケストラが如何に上手いかということにもなるのだが、さらに4人の若手指揮者の個性の違いも見事に浮き彫りにされていた。

 最初に登場した澤村杏太郎は、第1幕第2場途中までの、いわばドラマの「序」の部分を指揮した。それは実に整然とまとまっていて、なだらかな美しさを出してはいたが、その反面、オペラとしての劇的要素の表現や、登場人物の心理描写などの点では至極物足りないものがあり、このままではこの「仮面舞踏会」というドラマは成立し難いのではないか、と思われたほどであった。

 しかし次に登場したオッテンザマーは、オペラを指揮したことがどのくらいあるのかは承知していないが、彼が指揮を始めた途端に、音楽に色彩感が生まれて来てしまうのだから敵わぬ。彼が指揮を受け持った個所には、ウルリカの予言の場面と深夜の野原の場面とが含まれていただけに、ムーティには及ばぬまでも、オーケストラから不気味な緊張感を引き出して、大いなる劇的な盛り上がりを聴かせることができたというわけであろう。

 続くレナート・ウィスも、第2幕後半から第3幕冒頭の部分という劇的要素の強い場面を指揮して成功、最後の女性指揮者クラインも極めて勢いのいい音楽的昂揚を聴かせて見事に締め括った。

 かように、指揮を受け持った部分によって、各々の個性が発揮できたかどうかの違いは生れて来るのは確かだ。全曲が終ったあとの講評でムーティは「どの部分を受け持つかは、レナートたちと同じようにクジで決めた。どこに当たるかはLa Forza del Destino(運命の力)による」と語って聴衆を笑わせていたから、彼自身もそのあたりはよく承知していたのだろう。

 ムーティは4人の指揮者たちに「修了証書」を授け、最後に「パリアッチョ」の幕切れの歌詞をもじって「La Accadèmia è finita!」と大声で宣言し(確かそう聞こえたけれど?)演奏会を閉じた。東京・春・音楽祭の大物のひとつが終った。

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