2024-02

2023・4・29(土)インキネン、首席指揮者としての最終東京定期

       サントリーホール  2時

 日本フィルハーモニー交響楽団の4月東京定期。
 2009年9月より首席客演指揮者、2016年9月からは首席指揮者のポストに在ったフィンランドの俊英ピエタリ・インキネンが、今シーズンを以て退任。今日がその東京最終定期となった。ただし、埼玉と横浜では5月にも彼が指揮するベートーヴェンの「第9」による定期があり、東京でも同じプロによる「名曲コンサート」)がある(19~21日)。

 この東京最終定期では、満を持して、というか、最後だから、と言うのか、シベリウスの大作「クレルヴォ交響曲」がプログラムに組まれた。そしてインキネンの強い要望により、合唱にはヘルシンキ大学男声合唱団がこの定期のために招聘された。
 経済的に苦しい自主運営のオーケストラが、よくまあこんな大勢の合唱団をフィンランドから招いたものである。

 だが、招聘しただけのことはあった。彼らのフィンランド語歌詞の響きを生かした歌唱による演奏の確かさ、深みと底力のある歌唱は、如何に日本の合唱団が技術的に上手くても、なかなか達しえないものであろう。敢えて言えば、今日の主役の座は、このヘルシンキから来た合唱団が攫ってしまったに等しかった(合唱の一部には東京音楽大学の合唱団も加わっていた)。

 日本フィル(コンサートマスターは扇谷泰朋)は、実に丁寧に、立派にこの「クレルヴォ交響曲」を演奏したが、不思議なことに、また惜しいことに、シベリウスの音楽が放射するあの独特の翳りの濃い郷愁にも似た深い情感があまり感じられないままに終ってしまった。この辺が、俊英とはいえ未だ若い指揮者インキネンの一種の限界のようなもの、と言えるのかもしれない。

 声楽ソリストには、これもフィンランドのヴィッレ・ルサネン(Br)とヨハンナ・ルサネン(S)とが招聘されていた。前者は力強いバリトンで野人クレルヴォの役柄を適格に歌ってくれたが、ヨハンナの方はまるでブリュンヒルデのようなドラマティック・ソプラノで、いくら北方の伝説上の女性とはいえ、この悲劇の「妹」役としては些か物々しい表現に過ぎたようである。

 今日はこれ1曲。終演後にはインキネンに花束が贈られた。客席の拍手は合唱団にも送られたが、インキネンにはソロ・カーテンコールも贈られていた。

コメント

ブラボー

首席最後の定期、ラストを締めくくるにふさわしい見事な演奏でした。曲も日フィルとして37年ぶり、渡邉曉雄指揮以来とか!正にインキネンも日フィルも満を持しての演奏だったのでしょう。作品的には27歳頃、1番より7年位前の、若書きですから深い陰影と言うよりは若いシベリウスの魅力満点。オケも渾身の演奏、男性合唱とはかくも素晴らしいものかと痛感、ソロも十分に魅力的でした。
インキネンには今後も定期的な来演を期待したいものです。会場も盛り上がり、感動的ではございました。

今回も的を得た評をありがとうございます。
いつもは安い席なのですが、今回珍しく先生のお近くで拝聴させていただきました。
「ブリュンヒルデのようなドラマティック・ソプラノ」との評は同感です。
更にいえば、今夏リングを振るインキネンは、クレルヴォの神話的世界を、
ワーグナーの延長線で捉えているのではないか?と感じるところが多々ありました。
また、小川さん率いる2ndと安達さんのヴィオラが上手かったのが大変印象に残りました。

ヘルシンキ大学男声合唱団!

ヘルシンキ大学男声合唱団の「クレルヴォ交響曲」を、CDで拝聴しています。素晴らしい合唱団ですね!会場で拝聴したかったです!

日フィルといえば、私が就職して東京在住中だった1958年から1965年頃まで、N響とともに定期会員でした。渡邉暁雄さんが常任指揮者だったことで、シベリウスの曲が演奏される機会がかなり多かった記憶があります。
日フィルとソロの松田洋子さんの協演で間宮芳生さんのヴァイオリン協奏曲の初演を聴きましたが、素晴らしい曲と演奏に感激しました。
小澤征爾さんを初めて客演に呼んだのも日フィルでした。まさに才気煥発といった演奏で(バーンスタイン譲りの指揮姿も含めて)、とても新鮮でした。それまでの日本人指揮者とは一線を画す才能だったのが、一部の保守的なオケには嫌われたようですが。
ただの懐旧談で申し訳ありません。

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