2024-03

2023・5・14(日)ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団「エレクトラ」

      サントリーホール  2時

 昨年の超弩級名演「サロメ」に続く、ノットと東京響のR・シュトラウス路線。
 今年は「エレクトラ」で、歌手陣は以下の通り━━クリスティーン・ガーキー(エレクトラ)、ジェイムズ・アトキンソン(その弟オレスト)、シネイド・キャンベル=ウォレス(その妹クリソテミス)、ハンナ・シュヴァルツ(母親クリテムネストラ)、フランク・ファン・アーケン(その夫エギスト)、山下浩司(オレストの付け人)、伊藤達人・鹿野由之(召使)、増田のり子(監視の女)、金子美香・谷口睦美・池田香織・高橋絵里・田崎尚美(下女)、二期会合唱団。コンサートマスターは小林壱成。

 演奏会形式で、歌手陣はステージ前面に立ち、多少の演技(演出監修・トーマス・アレン)を加えながら歌う。
 私が聴いた2階席正面6列あたりでは、歌手たちの声は超大編成のオーケストラの最強音にマスクされることが多かったが、それでもクリスティーン・ガーキーの堂々たる体躯から生まれる強靭な声は、そのオーケストラをバックに朗々と響き渡って来ていた。やはり凄い。東京響も昨年の「サロメ」の時と同様、嵐のような勢いで演奏を聴かせてくれた。

 「サロメ」と違ってなかなか日本では上演の機会のない「エレクトラ」だが、このような優れた演奏により紹介されたことは嬉しい。R・シュトラウスがあの「ばらの騎士」でオペラの作風の大転換を遂げる以前にはどんな物凄い音楽を書いていたのか、それが日本のファンにも広く知られるいい機会になったことであろう。

 ただ、その上で欲を言えばだが━━ノットの指揮がややスペクタクルな側面に重点が置かれてしまい、「悲劇」という側面が希薄になっていたことには、些かの疑問が残る。
 たとえば全曲の結び、総譜にritard.molto(極度に減速して)からlangsam(遅く)と指定された最後の6小節で、ノットがかなりのアッチェルランドをかけて追い込んで行ったことなども、その一例ではなかろうか。もっとも、こういう指揮をする人は少なくはないのだが。

 ハンナ・シュヴァルツが、この8月で80歳になるにもかかわらず、底力のある凄みを湛えた声で母親クリテムネストラを素晴らしく歌ってくれたことに最大の称賛を送りたい。バイロイトやザルツブルクなどで何度も聴いたあの性格派メゾ・ソプラノは、今なお健在だった。立派なものである。
 舞台袖から響いた「母親」の不気味な断末魔の悲鳴は、日本人にはあまり出せないタイプの声だったが、まさか彼女のものではなかろう?

 カーテンコールは、本当に何年ぶりかと思えるほど、久しぶりに熱狂的な雰囲気になった。熱烈なブラヴォーの合唱が、これを機に、昔通りに復活してくれるといいのだが。

コメント

ツイッターによると…

クリテムネストラの"死の叫び”は二期会合唱団より #小林紗季子さんが担当したそうです。

1980年のウイーン国立歌劇場引っ越し公演(クロヴチャール、ニルソン、リザネック、ホフマンその他)に接して以来の実演です。とにかく歌手が粒よりで、オケも(コンサート形式なのですから)このくらいスペクタクルにやってくれた方が楽しめます。キャンベル・ウォレスが素晴らしく、イゾルデ、ブリュンヒルデも歌えそうです。

熱演に大感謝!

前回「エレクトラ」を聞いたのが2003年のN響の演奏会形式でした。調べるとその後、2004年に新国立、2005年に東京オペラの森の上演がありましたが、聞き逃しました。
そして昨年の読響の演奏会形式上演に大いに期待していましたが、コロナで中止となりました。
ですから待ちに待って14日に約20年ぶりで聞くことができました。
あの広いサントリーホールのステージを埋め尽くした東響の熱演(スコアをパラパラめくると「こんなのよく演奏したな!?」)、そして歌手の力演に大感謝です!

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