2024-02

2023・5・20(土)ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団

       サントリーホール  6時

 これは6月定期。リゲティの「ムジカ・リチェルカータ第2番」と、マーラーの「交響曲第6番《悲劇的》」を組み合わせたプログラム。コンサートマスターはグレブ・ニキティン。 

 オーケストラがすべて位置に就き、チューニングが終ったところで照明が消え、上手後方のピアノにスポットが当たり、小埜寺美樹がリゲティの小品を弾きはじめる。
 ほんの3分ほどの曲だが、限られた音階の音のみを高く低く繰り返すその曲想が緊迫した感を与える。その最後の音が消えると同時にステージが明るくなり、マーラーの「交響曲第6番《悲劇的》」の低弦による行進曲のリズムが響きはじめる、という具合だ。

 オーケストラ定期でありながら、オーケストラ曲でない小品などをその導入のような形として置くのは、ノットがこれまでにも試みて来た手法だった。
 たとえば、ヴァレーズの無伴奏フルートによるソロ曲「密度21.5」に続いて同じヴァレーズの「アメリカ」を演奏した例(☞2018年12月15日)とか、100台のメトロノームを使ったリゲティの「ポエム・サンフォニック」に続いてバッハの「甘き死よ来たれ」を演奏した例(☞2015年11月23日)などが記憶に新しい。
 今回のこの組み合わせと接続は、少なくとも聴感上では、必ずしも納得できるものとは言い難かったが、もちろんノットには選曲の面でそれなりの意図があったのだろう。

 マーラーの「6番」では、ノットは他の一部の指揮者のような、威圧的で暴力的な音響で押しまくるという手法は採らない。
 第1楽章冒頭のリズムは戦闘的なフォルティッシモではなく、総譜に指定されたとおりのフォルテで開始される。また総譜に指定されたテンポ「アレグロ・エネルジーコ・マ・ノン・トロッポ」を、多くの指揮者は「エネルジーコ」に重点を置いた猛然たる演奏で構築するが、ノットは「マ・ノン・トロッポ」を無視せず、ややゆっくりしたテンポで進めて行く。
 そのイメージは、第4楽章にも引き継がれているように思われ、よくありがちな「凶暴さ」に陥ることから救っているだろう。

 だが今回のノットの指揮で最も驚かされたのは、第4楽章で、ハンマーが5回も使われたことだった。
 マーラーがのちに削除した3回目のハンマー(第783小節)が復活されているのは特に珍しいことではないけれども、楽章冒頭の第9小節でいきなり叩きつけられたのには仰天させられたし、それから、あと1回はどこだったか━━多分第530小節ではなかったかと思うが、そこでも炸裂した。その根拠がどこにあるのかは、私には分からない。もしかしたら、ウクライナ戦争に関連してのノットの解釈なのかもしれないが、定かではない。

 東京響は今回も熱演した。「エレクトラ」で疲れたわけでもないだろうが、演奏に少々ラフなところもあり、いつぞやの「5番」の時と同じような瑕疵が散見されたのは残念至極である。だがそれも、第3楽章(アンダンテ楽章)を含む後半2楽章では持ち直した。客席は見たところ、ぎっしりの印象。快調な進撃を続けるノットと東響の人気を物語るだろう。

コメント

ハンマー

21日、ミューザ川崎での名曲シリーズで聴きました。
のっけからのハンマーでびっくりしました。そして計5回でしたので、終演後直ぐにプログラムの解説を確認しましたが、全く今回の演奏に関して触れられていませんでした。
作曲当初3回であったのを改定後2回にしたことしか、触れられておらず、プログラム冊子には今回のノットの演奏解釈を掲載して欲しかったと思います。

新国立劇場のボリスにしても、演奏、音楽面、解釈に関する記事が非常に少ない物が稀にあり、その様な時、公演への準備(プログラム冊子作成等)に不満や物足りなさを感じます。

演奏自体はオケの音が輝き、陰影の濃い、引き込まれる演奏だったと思います。
出だしのトランペットが若干不調に感じましたが、出だしだけのようでしたので、安心して聴いていました。

エレクトラに続く快演で十分に楽しみました。

マーラーが最初にハンマーを入れたときは5回だったとのことですからそれを参考にしたのでしょうか。楽器編成や音は同じではないものの楽譜通りの2回または3回のハンマー打撃箇所と同じフレーズが5回出てきますからそこに全部ハンマーが入っても分からないではないです。

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