2024-03

2023・5・25(木)新国立劇場 ヴェルディ:「リゴレット」

       新国立劇場オペラパレス  2時

 エミリオ・サージによる新演出。10年前にアンドレアス・クリーゲンブルクの演出(☞2013年10月3日の項、ホテルを舞台にした演出)で上演されて以来のプロダクションになる。全6回公演で、今日は3日目。

 原作の時代にこだわらぬ舞台装置(リカルド・サンチェス・クエルダ)だが、しかし衣装(ミケル・クレスピ)はトラディショナルなスタイルだ。
 演出も比較的オーソドックスかつ穏健なもので、主要人物3人の性格に新しいものを付与するというタイプの舞台ではない。第3幕で、スパラフチレとマッダレーナが兄妹の関係を逸脱した仲に設定されるなど、欧州の演出家がよくやる捻った描写も顔を覗かせるものの、全体としては、原作通りに固定されたドラマを、やや現代的な舞台装置の中に展開させるといった手法であろう。
 なお、ジルダが殺される場面の演出は少々腑に落ちず、もう少し凄味が出てもいいだろうとも思わせた。

 今回のプロダクションでは、歌手陣がいい。マントヴァ公爵役のイヴァン・アヨン・リヴァスは、演技の上では所謂遊び人タイプの公爵像とまでは行かないけれども、声の伸びが良い。リゴレット役のロベルト・フロンターリは、これはもうベテランの味だ。何といっても好感を呼んだのはジルダ役のハスミック・トロシャンで、今日は最高音の不安定さはあったものの、若々しく澄んだ快い声で、清純そのもののジルダ像を描き出していた。

 また邦人勢で固めた助演陣も、妻屋秀和のスパラフチレをはじめ、清水華澄のマッダレーナ、須藤慎吾のモンテローネ伯爵(怒りの表情が迫力充分)が光っており、さらに森山京子(ジョヴァンナ)、友清崇(マルッロ)、升島唯博(ボルサ)、吉川健一(チェプラーノ伯爵)、佐藤路子(同夫人)、前川依子(小姓)、高橋正尚(牢番)も手堅く脇を固めていた。そして、新国立劇場合唱団(三澤洋史指揮)がまた実に強力だったことを特筆しておきたい。

 指揮者のマウリツィオ・ベニーニは、最近は専らMETのライブビューイングで聴くのみだったが、引き締まった緊張感のある演奏を東京フィルから引き出し、第1幕最後でリゴレットの不安と焦燥が急激に増して行く場面の音楽での息詰まる追い上げ、第2幕でマントヴァ公爵が不安から歓喜に一転する場面の音楽でオーケストラの音がぱっと明るくなる呼吸の見事さなど、今回は実に鮮やかな手腕を示してくれた。こういう音楽を聴かせてくれる指揮者はいい。

 だが、このような雄弁なオーケストラの演奏を聴くと、いつも思うことなのだが、外国の歌劇場並みにピットの位置をもう少し高くして、オーケストラを主役の一翼として扱うようにできぬものかと━━新国立劇場での上演を聴く時にいつも頭をもたげて来る苛立たしさが、またもや蘇るのである。

コメント

ピット

私は海外の歌劇場を知りませんが、ピットが高いのですね。東条先生のおっしゃるように、日本でもピットがもう少し高ければ、と思います。オケの素晴らしい演奏も、主役の一翼として扱ってもらえればいいですね!

今回、新演出ということで期待をして初日に拝見しました。
新演出なので、さぞ気合いが入っているのかと思いきや、オーケストラの響きがペラペラに薄い。
ベニーニという手練のオペラ指揮者なので期待をしていたが残念。
ベニーニは、中々東京フィルが言うことを聞かないのか(?)、かなり煽っていた。
第二幕から第三幕への舞台転換時、しきりとオーケストラに指示を出していたが、どのようなやり取りなのかとても気になる。
歌手陣はホールの響きを探りながらの慎重な歌い方。
ヴェテランで既に新国立劇場に出演経験のあるフロンターリでさえ、声にハリが感じられない。
トロシャンのみ良く響いていたが、ここの音響を知ればもっと伸びやかな声が聴こえるのではないか。
特に外来勢は自分の声の響きを確かめながらの慎重な歌い方。

その点この劇場に何回も出演を重ねている日本勢、特に妻屋秀和、清水華澄、須藤慎吾、森山京子の安定した声と演技は流石なもの。

新演出であるから、リハーサルから十分に時間をかけての上演なのかと思ったが、そうではなかったのか?
自分の声がどう響くのかを確認出来るまでのリハーサルは無かったのだろうか?

ベニーニはとてもいい指揮者なのに。

それにしてもこの東京フィルは指揮者で演奏をこうも変えるのか?
勿論指揮者で演奏は違ってくるが、力が入っている演奏と、そうでない時の差が激しすぎる。定期でもオペラ公演のピットでも。

また初日公演終了後は、威勢のいい『ブラボー!』が飛んでいたが、『そこまで叫ぶか?』位の勢いだった。私が着席していた付近のお客さんは何人もその声の方向に振り返っていた。新国立劇場ではどのような公演でも派手派手な『ブラボー!』が聞こえる。

新国のオケピット

新国の1階席は、ご指摘のようにオケの聞こえが悪いので、2階席の右か左の前の方で聴くようにしています。オケのメンバーが見える席だと、ストレートに音が来て楽しめます。

ベニーニが活を入れたのかどうか知りませんが、3日目の演奏は東京フィルもなかなかやるじゃないかと思わせる演奏で、4階席では特に響きの厚みに不足を感じることもなく楽しめました。洋の東西を問わず、「親の心、子知らず」ですね。
(25日から27日にかけて、25日の夜を除き(私はN響B定期)、東条さんと同じ行程でした。)

公演4日目、5/28

初日では手探りな感じでの公演であったが、4日目ともなると外来勢も腑に落ちた様子で、トロシャンは更に伸びやかな歌声、リヴァスはハリのある強い歌唱、フロンターリは道化としての自分の人生を恨めしく思い、方や愛娘ジルダへの深い愛情、そのジルダを傷ものにしたマントヴァ公爵への憎悪、モンテローネ伯爵からかけられた呪いへの恐れ等、感情の表現が見事に声となって表れていたと思う。
ピット内のオーケストラも、出だしのトランペットが音を外した以外、概ね良好であったと思う。

本日の座席は全くピット内を覗く事が出来ず、譜面台への照明が反射した光を感じる程度であったため、ベニーニの指揮ぶりは全く分からなかったが、響きが初日公演とは遥かに違った。初日に着席した座席より条件が悪い座席ではあったが、ビリビリと音が飛んできた。

初日からこのような舞台であれば良いのにと、つくづく感じる。

不満があるとすれば、後ろに座るご婦人が足を組んで座っていて、組み直すたびに、ヒールの先がコツコツと、酷いときはゴンと腰に響くほど蹴飛ばさられるのが難儀だった。
また客同士の小競り合いも見受けられ、物騒に感じた。

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