2024-03

2009・3・14(土)関西二期会 ブリテン:「ルクリーシア」

  アルカイックホール・オクト(尼崎)

 原題は「The Rape of Lucretia」。一般には「ルクリーシアの凌辱」という訳語で知られているが、言葉がいまどき解り難いからか、あるいは世間体を慮った(?)のか、今回は「ルクリーシア」のみの表記で上演されていた。
 もちろん筋書きが変えられたわけではない。演出(中村敬一)は、レイプ場面をシルエットも利用してちゃんと(?)描く。といっても最近流行の過激演出に比べれば至極穏便なものだが、この程度で充分だろう。こんなシーンをリアルにやられてはたまったものではない。

 ただ、ラストシーンでルクリーシアを十字架上のキリストとして描く発想は、少々安易に過ぎないか、と思う。
 もちろんこの台本が、エトルリア人の暴虐の犠牲となった彼女をキリストになぞらえて悼むという形を採っていることは承知している。が、本来これは古代ローマを舞台とした物語なのであり、にもかかわらず幕切れに至って突然キリスト教の思想に切り変わるという、非常に我田引水的な、木に竹を接いだような結末に仕立て上げられているという見方も拭えないからだ。今回の演出は、台本をきわめて忠実に踏襲したもの、ということになる。

 舞台装置(野崎みどり)はカーテンを使ったシンプルなもので、室内オペラとしての性格からすれば、これもさほど不足を感じない。

 演奏は、奥村哲也指揮のエウフォニカ管弦楽団(13人編成)。もう少し響きに溶け合いが欲しいところだが、この作曲者独特の音色――曖昧な表現だが、「そう、ブリテン!」と感じるあの名状しがたい響きである――が紛れもなく随所に聴き取れたことは事実であった。
 歌手陣はダブルキャストの第2日組で、みんな健闘。油井宏隆(悪役タキニアス)と大西信太郎(将軍ジュニアス)はイケメンで舞台姿も映えるし、歌唱に更なる研鑽を積んでオペラ界のスターになって欲しい。西村薫(ルクリーシア)も同様、いい雰囲気を持っている。

 滅多にやられないオペラゆえに上演の意義は充分だし、しかも良心的なプロダクションで、それなりの成果を収めたのではなかろうか。ブリテンのオペラは、関西では昨年秋にカレッジハウス・オペラが「真夏の夜の夢」を上演しているし、今年5月にはいずみホールが「カーリュウ・リヴァー」(原作の「隅田川」との2本立上演)をやることになっている。ちょっとしたブームか。

 JRの大阪から尼崎までは170円なのに、帰りに阪神電車を利用したら尼崎駅から梅田駅まで230円――この差に首をひねる。しかし、久しぶりに訪れた阪神の尼崎駅前が見違えるようにきれいになっているのには感動した。大阪のホテルに一泊、明日はびわ湖の「トゥーランドット」を観てみよう。

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