2024-03

2023・6・19(月)METライブビューイング「チャンピオン」

       東劇  6時30分

 4月29日にメトロポリタン・オペラで上演されたテレンス・ブランチャード(1962年生)の「チャンピオン」を観る。

 パンデミック以降のMETは、スタンダードなレパートリーに加え、このような現代オペラの上演にも力を入れており、しかもそれらを全て「ライブビューイング」のプログラムにも乗せるという方針を採っている。これは、今まで歌劇場には縁のなかったような若い観客を呼び入れ、活性化を目指すという総帥ピーター・ゲルブの考えに基づく方針のようだ。

 事実、METではそれが目覚ましい効果を上げているようで、今回の「チャンピオン」のカーテンコールにおける拍手と、口笛と、歓声のスタイル(ブラヴォ―ではない)などが、それを証明しているだろう。
 ただ、全世界向けの「ライブビューイング」の映画興行となると、それがどこまで効果を上げるかが微妙なところで、━━特に保守的なオペラ・ファンの多い日本では苦しいかもしれない。この辺のPR戦略は、勧進元の松竹に頑張っていただくしかないようだ。

 このオペラ「チャンピオン」は、実在のボクサーで、何度かチャンピオンになったエミール・グリフィス(1938~2013)を主人公にしたもの。
 彼は1962年にベニー・パレットというボクサーを試合で死に至らしめてしまい、生涯それを心の重荷にしていたが、のちにベニーの息子と巡り合い、その許しを得てやっと気持に平安を得たという。また彼はバイセクシャルであることを隠し続けていたそうである。

 オペラは、このような彼の生涯を、驚くほど忠実に描いている。また音楽は、クラシック音楽のオーケストラとジャズ・バンドとを巧みに融合させた━━つまり、「ポーギーとベス」ではなく、「ウエストサイド・ストーリー」の━━スタイルが採られている。
 素材と音楽のこういった特徴は、アメリカの観客には多分身近なものであり、それゆえこのオペラがMETで成功を収めたのも理解できるというものだ。

 主人公のエミール・グリフィスを、ライアン・スピード・グリーン(青年時代)と、エリック・オーウェンズ(老年時代)が演じ分ける。後者の演技が実に寂寥感に富んで、巧い。
 その他、彼の母親エメルダ・グリフィスをラトニア・ムーア、ゲイ・バーの主人キャシー・ヘイガンをステファニー・ブライズ、ベニー・パレットをエリック・グリーンが歌い演じている。

 指揮はMETの音楽監督ヤニック・ネゼ=セガン、演出はジェイムズ・ロビンソン。因みにロビンソンは、先頃METで上演されたブランチャードの2つ目のオペラ「Fire Shut up in My Bones」(☞2022年1月30日の項)を共同演出した人でもあり、今回もラストシーンで同じ手法を使用している。上映時間は2時間40分。

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