2024-02

2023・6・20(火)NODA・MAP「兎、波を走る」

       東京芸術劇場プレイハウス  7時

 野田秀樹の作と演出、高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一らが主役陣を務め、野田秀樹自身も「作家」役として、いつものようにけたたましく暴れ回っている。
 みんな達者な演技だが、今回は特に「アリスの母親」役の松たか子の強い存在感と、「元女優」役の秋山菜津子の見事な怪演ぶりが印象に残った。

 題名の「兎、波を走る」からして、あの「うーさぎ、うさぎ、なに見て跳ねる」のモジりかな、とは思っていたが━━取材資料にも「なみ見て、はしる・・・・!?」とネタバレが載っていた━━こういった野田秀樹特有のコトバの遊びがいたる所に散りばめられていて、観客の笑いを呼ぶ。
 「もう、そうするしかない」「妄想するしかない」などというダジャレがドラマのキーワードになっていたり、チェーホフの「桜の園」とチエホフの「遊びの園」、「ブレヒト」と「ブレルひと」が対照されたりというのはまだ序の口で、工作員集団を訓練する厳しい教官を「東急ハンズの教官」と呼ぶのは何かと思ったら、これは「東急半ズボン教官」の略だったりと、よくまあ思いつくものだと感心させられる。

 芝居そのものは、コミカルな内容のように見せながら、実はすこぶる深刻な問題が扱われている。主要なモティーフは、おそらく「不思議の国のアリス」の「アリス」と「兎」(脱兎)、仮想の世界と現実の世界の交錯とその恐ろしい境界線、それに「不条理」━━といったものだろうか。
 それらに加え、現在の日本に深い関連のある微妙な国際問題も取り込まれていて、時にはハラハラさせられるようなセリフも織り込まれる。さらに家族問題、母と娘の問題なども・・・・と、ありとあらゆる素材が複雑に絡み合わせられて、不条理な世界が描かれて行くというわけだ。

 どんな滅茶苦茶な内容も、それが演劇の中に入ると、「不条理」というもっともらしい言葉に美化されて成立してしまうものだ。が、この野田秀樹の芝居はすこぶる複雑巧妙に作られているので、実に面白い。どこにポイントを置いて観るかは観客それぞれの自由ということになるのなら、私が最も恐怖感を味わったのは「AI」の強力さと、仮想と現実の交錯の不気味さ、という点にあったと告白しておこう。

 今回は舞台も大がかりで、映像演出も目まぐるしく、視覚的にも甚だ凝ったものになっている。休憩なしの2時間強、その重量感と濃密さには少々疲れたものの、手応え充分の芝居ではあった。
 この「兎、波を走る」は、東京では7月30日まで、大阪では8月3日から13日まで、博多では8月17日から27日まで上演される由。

コメント

大阪上演!

東条先生、情報有難うございます!大阪でも上演されるのですね。観に行こうと思います。楽しみです!

東条さんは芝居も見るんだ^_^

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