2024-02

2023・7・1(土)川瀬賢太郎指揮日本フィルハーモニー交響楽団

      横浜みなとみらいホール  5時

 日本フィルの横浜定期。モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲、「ピアノ協奏曲第25番」(ソリストは菊池洋子)、ストラヴィンスキーの「春の祭典」というプログラム。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 今や名古屋フィル音楽監督、札幌交響楽団正指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢のパーマネント・コンダクターを兼任する川瀬賢太郎。活動範囲が広がるとともに、その指揮も以前に比べ、格段にスケール感を増した。

 面白かったのはやはり「春の祭典」である。オーケストラを豪快に鳴らし、この曲のダイナミズムをこれでもかとばかり強調するが、そうした中でも音楽の骨格が折り目正しく整然と保たれているのが、如何にも川瀬の指揮らしい。喩えるなら「端整な凶暴さ」とでもいった「春の祭典」か。

 ━━こういう演奏で聴くと、ストラヴィンスキーの管弦楽法が如何に緻密巧妙であるかが明確に伝わって来る。そればかりか、作品にあふれるバーバリズムの中に、のちに彼が向かう新古典主義作風が微かに予告されているような感さえ起って来るという具合なので、これが演奏の面白さというものであろう。

 もっともこういうタイプの「春の祭典」は、かつてのピエール・ブーレーズの解釈にもそれに似た先例があるのだが、いま改めてナマで聴いてみると、実に新鮮な趣が感じられるのである。「春の祭典」という作品が持つ無限の可能性をまたもや教えられたような気がして、やはりこれはいい曲だなという思いに満たされた、そういう演奏だった。

 モーツァルトのコンチェルトも佳かった。川瀬と日本フィルの演奏も風格充分、いかにも「ハ長調」というイメージが打ち出されているのが、何とも愉しい。そのオーケストラの力感の中に、菊池洋子のソロが実に清澄な表情で、これまた「ハ長調の気品」をたたえて歌う。

 なお彼女はアンコールとして、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」の冒頭のアリアの部分を弾いた。
 昔、かのルドルフ・ゼルキンがデビュー間もない頃、アンコールでこのアリアを弾きはじめたのはいいけれど、勢い余って止まらなくなり、本編の変奏曲にまで入ってしまって収拾がつかなくなった、という話をどこかで読んだような気がするが(細部は記憶違いかもしれない)、まさか今日はそんなことにはなるまいな、と思いつつ、気持よく聴いた。
 全曲の演奏は、8月4日に東京でのリサイタルで実現するはずである。

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