2024-03

2023・7・14(金)リチャード・トネッティ指揮紀尾井ホール室内管

        紀尾井ホール  7時

 オーストラリア出身、現オーストラリア室内管弦楽団芸術監督のリチャード・トネッティが客演、弾き振りでユニークなプログラムを披露した。

 ヴォイチェフ・キラルの「オラヴァ」で開始、ハイドンの「交響曲第104番《ロンドン》」を演奏し、休憩後には武満徹の「ノスタルジア~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」とバッハのコラール前奏曲「主イエス・キリストよ、われ汝を呼ぶ BWV639」を続けて演奏、最後をモーツァルトの「ジュピター交響曲」で締めるという選曲。
 トネッティが指揮とヴァイオリンを受け持ち、オーケストラもチェロを除いて立ったままで演奏するというスタイルである。

 ハイドンとモーツァルトの交響曲を据えたプログラムの中に武満の作品を入れるくらいは珍しくなかろうが、1曲目をキラルの作品で始めるというところに、トネッティの面目躍如たるものがあろう。
 この「オラヴァ」もキラルらしく猛烈な曲で、曲調の点ではまさに「ポーランドの伊福部昭」といった趣きだが、弦楽器奏者たちが「狂ったような勢いで」弾き続ける光景も物凄く、最後は奏者たちがシャウトして終る(ただし声は少々弱かった)という賑やかさだ。

 それに続く「ロンドン交響曲」も、当然ながらノン・ヴィブラート奏法による鋭い音の連続で、かなり刺激的なハイドンが立ち現れた。こういうスタイルは今日、珍しいものではないけれども━━しかしこの演奏のようなガリガリした強音で叫び続ける音楽は、本来そうあるべきだと思われるようなアクセントの強い明快なピリオド楽器スタイルの音楽とは違うのではないか、という気もするのだが如何。
 だが今日の紀尾井ホール室内管の演奏、最後の「ジュピター交響曲」ではもう少し多彩な音になっていたので━━第2楽章最初のくだりなどは素晴らしい深みが感じられていた━━今日は初日の所為もあったし、オーケストラの「慣れ」の問題かもしれない。

 弱音のノン・ヴィブラート奏法で開始された武満の「ノスタルジア」には独特の趣が感じられたが、たまさかのフォルテの個所がやはり強靭な硬質の音色になっていて、聴き慣れている武満の音楽とはまったく異なる相貌になっている。だが、好みは別として、これはタケミツの新しい姿を見るような感があって、実に興味深かった。このようないろいろなアプローチに遭遇してこそ、彼の音楽は永遠のものになって行くのであろう。
 このニュー・タケミツ・トーンのあとにバッハのコラールが続くアイディアは秀逸であった。

コメント

キラルのオラヴァ

7月8日(土)に、福島県郡山市に出来てまだ数年のプロのオーケストラ、郡山交響楽団の4回目のコンサートで、ヴォイチェフ・キラルの「オラヴァ」を聞きました。「ポーランドの伊福部昭」とは正にその通り。場内を真っ暗にする演出の効果もあり、凄まじい音楽を堪能させてもらいました。これはもっと演奏されて良い作品です。
残念だったのは、この曲の指揮は井上道義氏の予定で、演出も井上氏が考案したらしいのですが、降板してしまった事です。本来このコンサートは郡山出身の本名徹次氏と、氏の師匠である井上氏が二人で交互に指揮し、メインのベトナムの作曲家による箏と笛の二重協奏曲の新作初演を二人指揮者で演奏するというのが売りだったようですが、本名氏のみの登板となり、オラヴァは急遽指揮者なしの演奏になったようです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中