2024-03

2023・9・8(金)サッシャ・ゲッツェル指揮東京都交響楽団

      サントリーホール  7時

 ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストはネマニャ・ラドゥロヴィチ)と、コルンゴルトの「シンフォニエッタ」が演奏された。コンサートマスターは山本友重。

 ゲッツェルはとてもいい指揮者だと思うが、これまで日本で聴いた演奏ではその本来の特徴をつかみかねていたのが正直なところだった。だが今日の2曲での指揮を聴いて、やはりこの人は作品によって大きくスタイルを変える主義の指揮者なのだなと思った次第である。

 たとえば今日のベートーヴェン━━ソリストのラドゥロヴィチにぴたりと合わせたのだろうが、重厚な響きながらしなやかな構築で、主題それぞれの性格に応じてテンポを大きく動かすという、今どきとしては珍しいスタイルの演奏だったと言えるのではないか。
 いっぽう、第2部でのコルンゴルトでは━━彼はこの曲を8年前にも神奈川フィルとの定期で取り上げていた(☞2015年11月30日)から、余程愛着があるのかもしれない━━エネルギッシュな演奏構築に一転、作曲者若書きの作品の面白さを要領よく再現してくれた。都響の演奏は、ベートーヴェンのコンチェルトでの方が完璧だったような気がする。

 ところで、セルビア出身のラドゥロヴィチの演奏━━これは一種の反時代的な演奏スタイルともいうか、実に面白い。
 前述の如くテンポやアゴーギクの変化を大きく採り、緩急を変幻自在、あらゆる音符をじっくりと息づかせる。ちょっとやり過ぎじゃあないか、とも感じられるような演奏だが、それが決して20世紀前半の演奏家のような、これ見よがしの恣意的な演出を感じさせるような演奏にならず、むしろあたたかい語り口の音楽になっているところが魅力だろう。
 こういうスタイルのベートーヴェン演奏を今の時代に堂々と押し通すラドゥロヴィチの感性は興味深い。

 聴衆の人気も素晴らしく、拍手も爆発的であり、スタンディング・オヴェーションを行なう人々も少なくなかった。なお彼はアンコールにヤドゥランカ・ストヤコヴィッチの「あなたはどこに」という曲を弾いたが、こちらの曲の後では、拍手はさっきほど大きくなかった。

コメント

記憶に残るコンサート

ネマニャ様の音は超美音。チャイコフスキーのコンチェルトでロマンチックなムード音楽的なアプローチで、これをそのままベートーベンに当てはめるのかと、ちょっと疑問を持って聴きました。しかし始まってすぐこの疑問は吹っ飛びました。もともとベートーベンのヴァイオリンコンチェルトは凄く奇麗で、美音家のために作曲されていたのだ。ということに気が付きました。細部までこだわりぬいた金細工のような演奏で、演奏のないところではオーケストラを笑顔で見渡し、体を少しだけリズムに乗せているところは見ていても楽しく、またネマニャ様がとても楽しそうに演奏しているところは好感が持てました。
そして彼の持っているヴァイオリンも大好きです。彼のヴイヨームの音色を聞いて、フレンチヴァイオリンの甘くジューシーで低音から高音までのびやかで繊細な音が素晴らしい。キラキラ輝く音とともに柔らかくもありながらきちっと芯がある。そんな演奏でした。
ベートーベンを聞いたという印象より、ネマニャ・ラドロヴィッチを聴いたという印象が残っていて不思議な感覚が残りました。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中