2024-03

2023・9・9(土)ヴェルディ:「2人のフォスカリ」

       新国立劇場オペラパレス  2時

 藤原歌劇団の公演(日本オペラ振興会主催)で、共催は新国立劇場と東京二期会。
 田中祐子の指揮、伊香修吾の演出。10日とのダブルキャストで、今日は上江隼人(ヴェネツィアの総督フランチェスコ・フォスカリ)、藤田卓也(その息子ヤコポ・フォスカリ)、佐藤亜希子(その妻ルクレツィア)、中桐香苗(その親友)、田中大揮(政敵ヤコポ・ロレダーノ)、及川尚志(その仲間バルバリーゴ)。東京フィルハーモニー交響楽団と、藤原歌劇団合唱部、新国立劇場合唱団、二期会合唱団。

 珍しいオペラを取り上げてくれたものだ。ヴェルディの初期の作品で、「ナブッコ」「十字軍のロンバルディア人」に続くオペラである。
 「2人のフォスカリ」とはフォスカリ父子のこと。15世紀に実在した人物で、ストーリーもほぼ歴史上の出来事に従っているが、主人公の父子を襲った救いようのない悲劇という形が採られているため、2人に同情的に描かれていることは当然だろう。物語がなかなか進展しないというピアーヴェの台本の拙さは感じられるものの、ヴェルディのシンプルながら美しい旋律と和声にあふれた音楽が快い。

 このヴェルディの音楽の良さを引き出した第一の功績者として、私はやはり田中祐子の指揮を挙げたい。彼女のオペラでの指揮はこれまで僅かしか聴く機会がなかったのだが、切れがよくて活気があり、メロディとハーモニーを生き生きと描き出して、今日の指揮でも特にストレッタの個所での緊迫感の豊かさが際立ち、それがヴェルディ初期の音楽の特徴をうまく生かしていたのではないかと思われる。東京フィルも好演だった。

 歌手陣では、まず佐藤亜希子の豊かな声による情熱的な歌唱が印象に残る。自らの夫を陥れた政敵への怒りに燃え、義父フォスカリに復讐を唆す第3幕での歌唱と演技などはすこぶる迫真力にあふれていて、その「煽り」がむしろ、打ちひしがれた老総督の精神をいっそう破壊させてしまうのではないか━━とハラハラさせられるような場面をもつくり出していたあたり、見事なものだった。

 父親フォスカリ役の上江隼人も滋味あふれる演技と歌唱で、今回は最初から苦悩に満ちた「老い」を感じさせる総督として描かれる存在だったが、父親と公務との板挟みになる役柄をうまく表現していたと言えよう。
 息子フォスカリ役の藤田卓也は、今日は声が必ずしも本調子でなかったのかもしれないが、ここぞという個所での伸びのいい歌唱は、流刑の憂き目には遭うものの、まさに「無実な青年」という純粋さを感じさせる表現をつくり出していただろう。

 伊香修吾の演出は、シンプルで暗い舞台(二村周作の美術)により、暗黒政治の世界といった雰囲気をよく表現していたとは思うものの、父子への復讐に燃える政敵ロレダーノの存在をもっと不気味に描き出していれば━━特に第3幕において━━このドラマにおける人物構図がいっそう明らかになっていただろうとも思う。
 ただ、「十人委員会」の人物たちの動きは如何にも不器用で所在無げで表情に乏しく、これは演出の責任である(この連合合唱団、今回はアンサンブルを含め、あまり感心しなかった)。

コメント

10日を聴いた。Verdiでは初めて聴くオペラ、意欲的な取組みで有難い。指揮オケ共にVerdi節を楽しませてくれた。内容が劇的な場面がないので、シンプルな演出でライトで変化をつけても単調になるのは已む無いか。費用の制約もあるだろう。衣装も総督フォスカリ以外シンプル。その分Verdiの音楽が良くわかる。父フォスカリ押川浩士は第三幕の聴かせどころが良かった。息子役海道弘明は初めて聴くが最初から最後まで声量十分、朗々とホール内に響き、あっぱれ、今後の活躍を期待したい。妻役西本真子は出だし硬かったが途中から良くなってきた。合唱は三団体混成で、迫力はあった。
押しなべて満足の行く公演でした。

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