2023-12

2023・10・11(水)ヘンデル:「ジュリオ・チェーザレ」

       東京オペラシティ コンサートホール  4時

 「鈴木優人プロデュース BCJオペラシリーズVol.3」と題された公演。

 ヘンデルのオペラ「ジュリオ・チェーザレ」(ジュリアス・シーザー)のセミ・ステージ形式。
 鈴木優人の指揮とチェンバロ、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏、佐藤美晴の演出、稲葉直人の照明、臼井梨恵の衣装。
 出演はティム・ミード(チェーザレ)、マリアンネ・ベアーテ・キーラント(ポンペイウスの妻コーネリア)、森麻季(クレオパトラ)、アレクサンダー・チャンス(その弟トロメーオ)、大西宇宙(その腹心アキッラ)、加藤宏隆(護民官クーリオ)、藤木大地(召使ニレーノ)、松井亜希(ポンペイウスの息子セスト)。

 これは、力作、成功作と言っていいだろう。まず鈴木優人のスピーディで切れの良い指揮と、BCJの張りのある演奏が快く━━音楽には登場人物の心理の変化に即した表情の変化と陰翳がもう少し欲しいという気はしたものの━━ヘンデルの音楽の良さを充分に感じさせてくれた。
 また、久しぶりに観る佐藤美晴の演出も要を得て、ステージ中央に小さなピットのように枠で囲ったオーケストラを配置、その周囲に演技空間を置き、時にユーモアを交えた人物の演技により闊達な舞台を繰り広げ、ストーリーを極めて解り易く描き出していた。

 しかも、歌手陣が揃って快演だったので、音楽的にもすこぶる聴き応えがあった。チェーザレのミード、コーネリアのキーラントの風格は言うまでもなく、敵役トロメーオのチャンスのアクの強い歌唱と演技もいい。そして、強靭なバリトンにより特に前半で凄味を利かせたアキッラの大西宇宙、家政夫のミタゾノみたいな雰囲気を撒き散らして笑いを誘い怪演したニレーノの藤木大地。特にクレオパトラ役の森麻季の華麗で鮮やかな歌唱は素晴らしく、客席を沸かせていた。
 ただ、セストの松井亜希の第3幕における演技だけは、ちょっと解釈に苦しむところがあったが━━。

 ともあれこうして、特に中盤から後半にかけては、全く長さを感じさせぬ演奏と舞台になっていた。
 休憩2回を含み、終演は8時半。

コメント

西宮では

 初日、7日の西宮公演を観ました。よく練られた演奏だったと思います。オーケストラ、歌、人の動きなど、スムース。佐藤美晴さんの演出は音楽の邪魔をしないので悪くなかったですね。私がどうかと思ったのは、ニレーノ役の藤木大地さんの扱いかな。コミカルな役柄でもないように思うのですが、所作といいメイクといい衣装といい、よしもと新喜劇のすっちー座長を連想してしまいました。なんだか浮いた感じ。浮いた感じということでは、大西宇宙さんにもその気配。女声、カウンターテナーに囲まれたなかでは低音域男声はそうなってしまうのは仕方ないにしても、この歌唱はバロックオペラのスタイルなんだろうか、歌い方にしてもときに粗っぽさが耳につきました。素晴らしい声に恵まれている人なんだから、もっとよくなるはずと思うのだけど。

 題名役のティム・ミード、細かいコロラトゥーラのパッセージなど、テクニックは立派なものだと思います。敵役トロメーオのアレクサンダー・チャンスも同様、こういう役を歌える人が少ないのだから、貴重な存在に違いありません。ただ、この種の声が好きか嫌いかになると、人によりまちまちなのは疑いないところ。純粋に技巧の冴えを満喫できるかどうかということになるでしょうね。

 森麻季さんのクレオパトラは舞台映えがします。スタイルの良さを強調するようなドレス、絵画にあるエジプト女王を模したようなストレートヘア、ビジュアル面でもずいぶんアドバンテージがあります。もうキャリアも長くなったけど衰えはない。緩やかなアリアでは、音楽や言葉の流れが少し引っかかり気味になるところがありますが、気付く人はあまりいないでしょう。そして、最後のハッピーエンドの長いアリアは見事。この日一番の喝采。

 舞台の上に乗っているので、自然とオーケストラ奏者に目が行きます。バッハ・コレギウム・ジャパンはずいぶん平均年齢が高そう。そりゃ親子二代でやっているとこうなるか。 特に管楽器は演奏しにくそうだと思うけど、立派なものです。 鈴木優人さんはこういう古楽系専門なのかと思ったら、モダンオーケストラも振るのですね。少し前から、今月20日の鈴木優人、関西フィル首席客演指揮者就任披露記念演奏会のチケットを買っています。ラモーはともかく、ストラヴィンスキー、ブラームスというプログラムは興味深い。楽しみです。

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