2023-12

2023・10・17(火)セバスティアン・ヴァイグレ指揮読売日本交響楽団

      サントリーホール  7時

 前半にヒンデミットの「主題と変奏《4つの気質》」を、後半にハンス・アイスラーの「ドイツ交響曲」の日本初演を置くという、渋いけれども大胆なプログラム。
 特にこのハンス・アイスラー(1898~1962)の、声楽入りの1時間に及ぶ長さの「ドイツ交響曲」(1935年~1958年作曲)は、これが日本初演であり、今日の白眉ともいうべきものであった。

 ドイツ交響曲と言っても、作曲された時代から想像がつく通り、ドイツを賛美する音楽ではなく、ブレヒトの詩を主たる題材として、ナチスに虐げられたドイツの民衆、悲惨なドイツを描き出した作品だ。
 軍隊への呪詛、強制収容所の人々への激励、デモ指導者の葬送の行進、農民や労働者の歌など━━アイスラーは共産党員で、アメリカに亡命ののち、東独に戻った人である━━が織り込まれ、11の楽章からなる音楽にも、怒りに満ちているような、激烈な曲想が多い。「警察がデモを叩き潰した」と歌われたあとのオーケストラが突然中断するあたりの、聴き手を慄然とさせるような音楽の構成など、彼の劇的感覚の良さを思わせる。

 声楽のソリストには、アンナ・ガブラー(S)、クリスタ・マイヤー(Ms)、ディートリヒ・ヘンシェル(Br)、ファルク・シュトルックマン(Bs)という錚々たる顔ぶれが揃い、新国立劇場合唱団も出演したが、この豪華な声楽陣が作品の持つ魔性を充分に再現するのに与っていたことは言うまでもなかろう。
 戦争が身近に迫っているような今日の時代に、新たな意味を問いかけて来る作品の日本初演は、大いに意義のあることだと思われる。

 ヒンデミットの「4つの気質」は、弦楽とピアノのための30分ほどの作品で、ピアノ・ソロはルーカス・ゲニューシャスが弾いた。美しさはあったものの、ヒンデミットの音楽は、ごく一部を除いて、私にはどうも合わない。この曲も然りだ。ゲニューシャスはアンコールとして、ゴドゥフスキの「懐かしきウィーン」を弾いた。

コンサートマスターは長原幸太。

コメント

ヒンデミットの曲は私も苦手です。指揮者としてもあまり有能な人だとも思えません(戦後ウィーン・フィルが初めて日本に来たとき、京都で聴いたベートーヴェンの交響曲第4番第1楽章の冒頭、主題に入る前の上昇音型、振り間違えたか、オケが勘違いしたか、バラバラになって止まりそうになったのには呆れました)。
一方、シモン・ゴールドベルグ、エマヌエル・フォイアマンと協演したベートーヴェンの「セレナード」Op.8の超名演を聴くと、ヴィオラ奏者としては非常に優れた人だったのかなと思ったりします。

ヒンデミット好き

自分の音楽的素養が他者様とは異なることをまえまえからもしりつつ、本日はヒンデミットの4つの気質を楽しみにして演奏会に赴きました。まだ未熟な高校生ごろ、この曲の第三気質を聞いたとき、テンポが変わり軽快な音楽が流れ不思議な感触を得た作品で、なにか心に残ってしまいました。本日のゲニーシャスの演奏を聴いて不思議に昔のことをおもいだすことになりました。あのヴィオラ協奏曲「白鳥を焼く男」と同じくらい、ヒンデミットの中では大好きな曲です。

さてアイスラー。ヒトラー横行する時代の庶民からの歌を元に書かれていた音楽。音楽自体は合唱やソロの伴奏となっており、歌、歌詞そのものが主体な作品だったと思う。テキストを読みながらナチズム政策に従いつつも、労働者や農民の嘆く歌詞が強く心に訴える。その意味を増強、倍音かさせるような管弦楽。厳しさと脆弱になる心を支えるような強さも感じる音楽。音楽を聴いて楽しく思うひとときではなかった。世界で起こる紛争が心の中に宿り、それを垣間見るような厳しさを持った音楽であった。
長木さんの解説がのっていたがあれだけでは不足ではないか?と思う心が残った。

昨日の投稿の最後の一文、長木さんのくだりはカットします。ブレヒトの詩の解説が欲しかったと思っただけで、長木さんの音楽解説は十分でした。

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