2024-03

2023・11・24(金)イゴール・レヴィット ピアノ・リサイタル

        紀尾井ホール  7時

 レヴィットのベートーヴェンのピアノ・ソナタ・ツィクルス、昨年の第1回・第2回に続く今年は第3回と第4回。「2年間全4回シリーズ」とプログラム冊子には記載されていたので、今年でおしまいのようである。
 今日は第3回の日で、前半に「第17番《テンペスト》」と「第8番《悲愴》」、後半に「第9番」「第10番」「第14番《月光》」が演奏された。

 昨年聴いた演奏はすこぶる剛直で、強靭な意志の力を漲らせたものだったが、今日は一転して━━作品の性格ということもあるだろうが、どうもそれだけではなさそうだ━━沈潜して思索に耽りながら進んで行く、というタイプに近い演奏になっていた。
 レヴィットの演奏は同一曲でも毎回異なった表現になる例が多い、とは既に指摘されていることだが、それにしても「テンペスト・ソナタ」の冒頭2小節など、随分凝った弾き方をしているものだ。全音符のアルペッジョをひとつひとつゆっくりと弾き、次の二つの四分音符を更に切り離すようにして、止まってしまうほど長い「間」を取りながら弾く。

 楽譜の指定はたしかに「ラルゴ」で、そのあとのアレグロと対比させるように書かれているのは事実だけれど、このパターンをその後も毎回同じような形で繰り返されると、聴く側でも少々苛立たしい気持にさせられてしまう。もしそれがレヴィットの作戦だったのなら、こちらはまんまとそれに嵌ったことになるのだろう。何だか、ポゴレリッチを聴いているような錯覚にも陥らされた。面白いと言えば面白いのだが━━。

 そして、「作品10」の二つのソナタ(第9、10番)での不思議なほど柔らかい軽やかさ。「月光ソナタ」の第1楽章での重くうごめく暗さは、「幻想曲風ソナタ」という作曲者の表現にぴったりだろう。もちろん、「月光を浴びたルツェルン湖の‥‥」などという伝説とは遠いところにある、もっと不気味なイメージだ。

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