2024-04

2024・2・26(月)METライブビューイング「ナブッコ」

         東劇  6時30分

 今シーズンのライブビューイングは冒頭の3作が現代もので、しかも恐ろしく重い内容だったので、このヴェルディの名作「ナブッコ」で久しぶりに解放的な気分にさせられたという感。

 これは今年1月6日に上演されたライヴ映像だ。ストーリーは実に大雑把なものだが、何しろ音楽が素晴らしい。ダニエレ・カッレガーリの指揮が手馴れていて、しかも全曲の大半を占める合唱部分をMETの合唱団が見事に歌っているので、結構楽しめる。

 題名役のバビロニア王ナブッコをジョージ・キャグニッサ、その娘フェネーナをマリア・バラコーワ、その恋人イズマエーレをソクジョン・ベク、王位簒奪のバビロニア女性アビガイッレをリュドミラ・モナスティルスカ、祭司ザッカーリアをディミトリ・ベロセルスキーという配役。
 第1幕と第2幕は続けて演奏されていたが、モナスティルスカは第1幕での劇的な歌唱にすぐ続いて、第2幕冒頭のあの長大なアリアをもカットなしで楽々と歌っていた。
 彼女はウクライナのキーウ出身、ライバル役のフェネーナ役バラコーワがロシア出身(しかも2022年にMETデビュー)というキャリアには、少々複雑な思いを抱かされる。なお、有名な合唱曲「行け、わが想いよ、金色の翼に乗って」はアンコールなし。助かったという感である。

 この演出はイライジャ・モシンスキー、豪壮な舞台美術はジョン・ネイピアで、舞台の景観からすると、20年ほど前にMETで2度ほど観たプロダクションだと判るのだが、どうも演出の詳細についてはさっぱり記憶が残っていないのである。
 ただ一ヵ所だけ、最初に観た時には、バビロニア軍が中央の大門をバリバリと打ち破って侵入して来るという猛烈な演出だったが、2度目に観た時には門を壊さずに、ただ押し開けて入って来た‥‥ことを覚えている。いちいち派手に破壊していては大道具の製作費がかかってたまらないからだろう、などと勘ぐったわけだが、今回の上演では、更に簡略化(?)して、何となくあちこちからナブッコ軍団が入って来た。それゆえ迫力には欠ける。

 余談だが、私がMETで最初にその「ナブッコ」上演を観たのは2003年3月22日、折しもアメリカがイラクへの攻撃を開始して3日後のことだった。それゆえ、そのバビロニア軍の殴り込みの場面が殊更リアルに感じられてしまったわけである。ニュースを聞いた時には、よりにもよってエライ時にニューヨークに来てしまったものだ、と思ったが。
 因みに、攻撃開始(東部時間3月19日夜)の時刻に上演されていたのは、ひとを信じられなくなった人間の悲劇を描くヴェルディの「オテロ」で、指揮はワレリー・ゲルギエフだった‥‥。深夜にそれを見終わってリンカーン・センター前の広場に出た時、マンハッタンの空に月が鮮やかに輝いていて、この静けさがいつまで続いてくれるのか、と憂鬱な物思いに耽ったことは覚えている。

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