2024-02

2009・5・9(土)ユベール・スダーン指揮東京交響楽団
マーラー編曲によるシューマンの交響曲ツィクルス第1回

   サントリーホール

 さしもの東京交響楽団も、どうやら「ショスタコ荒れ」になったか?
 最初のブラームスの「悲劇的」序曲は、スダーンの指揮で演奏しているとは思えなかったほど、冒頭からしてラフな響きになっていた。
 まあ、「マクベス夫人」であれだけ連日のように咆哮を重ねていれば、それがあとを曳いてしまうのかもしれない。コンマスは両方とも同じニキティンだし。

 しかし、ブラームスの「二重協奏曲」に入ると、これはもう堂々たる威容の演奏に変わっている。弦16型でどっしりと、しかも瑞々しく構築された音は、実にスケールが大きい。ブラームスがこの曲を最初は交響曲として構想したという話を、ふと思い出させる。

 後半のシューマンの交響曲第1番「春」は、これまた予想外に荒々しいスタートになったが、それがマーラーの編曲ゆえの音なのか、それともスダーンのこの曲に対するアプローチのスタイルなのか、たまたまオーケストラが荒れていたのか、あるいはその全部なのか、一概には片づけられない。
 何か細密なニュアンスが感じられるようになったのは、第1楽章の終り近くのアニマートあたりからだろうか。第2楽章では、いかにもスダーンらしい、しなやかな叙情感が発揮されていた。
 ただ、他の楽章を含めて、スダーンとしてはもう少し全体に揺れ動くようなデュナミークを求めたかったのではないか――という気がしないでもない。それは単に、彼の指揮の様子から、私が勝手に憶測したに過ぎないのだが。
 ともあれ、「シューベルト・ツィクルス」でこのコンビが聴かせた、あの魔法のような音色とリズムと構築美は、今日のシューマンからは――残念ながら感じられなかった。

 マーラーの編曲版による「春」は、ナマでは初めて聴いた。シューマンの初稿をも部分的に取り入れてオーケストレーションを分厚くしたこの版は、あっちこっちにニヤリとさせられるような趣向が凝らされている。かなりしつこいデュナミークの強調もある。
 それは実に興味深くて面白いものだが、しかし畢竟、やはりマーラーはやらなくてもいいことをやったのではないか、という思いが、聴いている間じゅう、抜け切れなかった。思えばシューマンのオリジナルは、いかにすっきりして爽やかな音色であることか。

 だが、こうなったら(何が「こうなったら」だか判らないが)意地でも4曲全部聴いてやるぞ、という気がして来る。好みは別として、このツィクルスは意義のある企画だ。

 なお、「二重協奏曲」のソリは、ヴァイオリンがインゴルフ・トゥルバン。21歳でチェリビダッケに認められ、ミュンヘン・フィルのコンサートマスターに採用された(日本にも来た)ことのある人だ。しなやかで美しい音色で、弧を描くような豊かな音楽を演奏する人だが、なぜか今日は楽器をあまり鳴らさない。第1楽章ではオーケストラに埋もれるきらいもあったが、あるいは楽器のせいか? 
 一方チェロのウェン=シン・ヤン(スイス生れ)は骨太でがっちりした音を響かせる。2人の音量的なアンバランスは惜しかったが、しかし音楽的な意味では、聴き応えがあった。
 

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