2024-02

2009・7・18(土)第20回PMF シエン・ジャン指揮PMFオーケストラ

  札幌コンサートホールkitara
 
 昨年東京交響楽団に客演指揮した際には「シャン・ジャン」、今年のPMFの事前資料では「シャン・ザン」と表記されてきた中国出身の若手女性指揮者。来日してからのご本人の要望により「シエン・ジャン」に決まった。漢字で書けば「張弦」である由。
 今秋からミラノのジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団の音楽監督への就任が決まっている、いわゆるライジング・スター指揮者の一人である。

 彼女シエン・ジャン、昨年4月26日に東京交響楽団を指揮した演奏が非常に歯切れよく活気にあふれていたので、私は大いに注目し、彼女に期待する一文を今年の「PMFニュース」に寄せ、札幌まで聴きに来たのだが――何の要因によるものかは解らないけれども、今日の演奏のイメージはだいぶ違った。

 最初の曲目、アンドレ・ワッツをソリストに迎えた「皇帝」では、彼女はオーケストラに比較的軽やかで明晰なアプローチを求めていたものと思われる。が、引き出された音は、アンサンブルの上でも、個々のソリの面でも、何か手探り状態で、隙間の多い演奏という印象を拭い切れなかった。

 「ラ・ヴァルス」と「火の鳥」組曲でも同様で、特にこの2曲の演奏ではぎりぎりの最弱音が多用されていたが、それらは――劇的なデュナーミクの対比を創り出す点では効果的だったものの――単なる物理的な音量の減衰にとどまるのみで、音のふくらみや余情を感じさせるピアニシモにはなっていないのだ。このため音楽全体がむしろ痩せたものと化し、活気やエネルギーを失わせる結果を招いてしまう。
 たとえば「ラ・ヴァルス」冒頭の「渦巻く雲の中から舞踏会の光景が見え始める」部分など、あの不気味に胎動する音楽が次第に光明を増して一気にクレッシェンドして行くはずの流れが聞かれない。いつまでたっても音楽が逡巡しているような気分に陥らせるのである。
 また「火の鳥」終わり近く「子守唄」からフィナーレに移って行く個所での念入りな弦の最弱音も、もっと緊迫感が備わったものであったなら、と惜しまれる。

 しかしその一方、「火の鳥」の「魔王カスチェイの凶悪な踊り」や、フィナーレの「夜明け」でトランペットが華麗に高鳴るような個所では、PMFオーケストラは解放感いっぱいという雰囲気で、すばらしい躍動を聞かせる。その時にはシエン・ジャンの指揮も、張りのある魅力を生み出すのであった。

 もしかしたら、彼女とオーケストラとの「相性」という問題もあったのだろうか。オーケストラが成熟しておらず、強力なカリスマ的指揮に頼らなければ纏まれない状況にある時には、彼女の指揮は真価を発揮できないのだろうか?
 昨年の東響との演奏がなかなか印象深いものであっただけに、今夜の演奏だけを聴いて云々するのも早計かとも思う。

 久しぶりに聴いたワッツのピアニズムは、以前にも増して細身で軽いイメージのものであったが、この音色は、むしろ使用楽器によるところが大きかったのではないかという気もする。特に高音域の潤いのない痩せた響きは、ワッツ本来のものではあるまい。いずれにせよ、雄大さ、拡がり、馥郁たる和声美や旋律美といったものからは遠く、さりとて何かを新しく発見させたとも言えない演奏の「皇帝」であった。

 人気のアカデミー生のオーケストラ――PMFオーケストラの演奏会は、まさに満席の盛況である(前夜とはエライ違いだ)。
 先週のPMFオーケストラの演奏会は、クリストフ・エッシェンバッハが指揮した。来週はマイケル・ティルソン・トーマスが指揮する(マーラーの「5番」他)が、その一般公演は27日に大阪、29日に東京でも行なわれる。

 なおもう一つ、PMFは今年の「第20回」を記念して、絵葉書セット(20枚)とオリジナルフレーム切手(80円×10枚)なるものを制作した。私も1セットずつ手に入れたが、Tシャツの絵柄にもなっているデザインの葉書はともかく、野外ステージやキタラでの演奏会の写真などが図柄に利用されているちょっとめずらしい切手の方は、使うのが何となくもったいない。
 

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/529-99153bc4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・衛星デジタル音楽放送
ミュージックバード(エフエム東京系) 121ch THE CLASSIC
「エターナル・クラシック」
(毎週日曜日 12:00~16:00放送)出演

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中