2024-03

2010・1・13(水)札幌室内歌劇場東京公演 オルフ:歌劇「月を盗んだ話」

   新国立劇場小劇場

 これは新国立劇場の「地域招聘公演」の一つとして行なわれたもの。
 2005年に新国立劇場運営財団が開始した「全国各地の優れた舞台作品を招聘して上演」するシリーズの一環である。

 といっても、新国立劇場がすべての制作費を持つわけではなく、「各地の舞台創造団体との共催」だから、招かれる方も、それ相応の費用を分担しなければならない。今回は13日から、なんと連続4日間もの東京公演だ。札幌側も随分気張ったものである。「札幌のチカラ」とでも言うべきか。

 しかし、昨年9月27日に札幌で観た時よりも、上演の出来は格段に良くなっていた。照明も美しくなり、舞台の流れも円滑になったし、演技の表現もかなり改善された。セリフまわしは相変わらず大時代的だが、それでも「わざとらしさ」はかなり減少した。
 カール・オルフ独特のリズミカルな音楽に日本語訳詞を乗せて歌うのは至難の業だったと思うが、前回同様、4人の村人や亡者たちのアンサンブルの歌詞発音の明晰さには感心させられる(これは絶賛されていい)。
 また、5人の奏者用に編曲された器楽アンサンブルの演奏も、今回はいっそうリズム感も明解になった。それゆえ、オルフの音楽の特徴は、ある程度までは伝えられていたであろう。

 とはいうものの、地方のオペラが良くやっている――という褒め言葉のみに受け取られかねない賛辞を並べただけでは、札幌室内歌劇場に対してむしろ失礼になるだろう。それゆえ今回も、同歌劇場のみなさんに敬意を表して、正直な意見を若干述べさせていただく。
 最大の疑問は、オペラの後半――墓場の亡者たちの狂乱からペトルス(聖ペテロ)の登場、亡者たちへの彼の説教、彼の手で「月」が空に戻されて全てが平穏に治められるまでの流れが、前回同様、緊迫感に乏しく、劇的な昂揚を欠くことにある。

 これは、ペテルス役の歌手の発音が明晰さに不足することと、彼の歌唱および小編成の器楽アンサンブルが、遅いテンポを保ち切れないことにも原因があるだろう。全体に間延びした印象を拭いきれないのだ。大編成と小編成では、テンポの設定も変わっていいのではないか? セリフから音楽に移る瞬間の「間」を今ひとつ短くしただけでも随分印象が変わると思うのだが――。
 そしてまた、ペテルスが星を地上に投げつける光景が舞台上に具体的に描かれないと、亡者がパニックを起こす理由が理解されにくいだろう。
 要は、結果として、この物語の真の寓意が観客にどれだけ解り易く描かれていたかということである。

 芸術監督と編曲・訳詞は岩河智子、演出は中津邦仁、指揮は柳澤寿雄、美術は三宅景子。今回の東京公演では、照明を奥畑康夫、舞台監督を八木清市が担当している。
 

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/639-58f292f1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中