2024-03

2010・1・15(金)矢崎彦太郎指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
「フランス音楽の彩と翳」第16回

   東京オペラシティコンサートホール

 マスネの組曲「アルザスの風景」、ダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」、最後にマニャールの第4交響曲。
 日本のオーケストラの定期の中では極めて珍しいプログラムだ。これを聞き逃すというテはない。

 矢崎&シティ・フィルの「フランス音楽の彩と翳」は、これが第16回。
 私も全部聴いているわけではないが、ふだんあまり演奏されない作品も数多く取り上げられており、すこぶる意欲的なシリーズである。
 レパートリーも演奏内容も上質なので、一度このシリーズを聴いた人はみんな絶賛するのだが、惜しむらくは、人気が一般的になっていない。シティ・フィルのPRがそれほど積極的でないし、矢崎彦太郎の存在も地味であるというせいもあろう。

 プログラム前半の2曲――これはすこぶる豪壮な演奏であったが、「アルザスの風景」は、フランス人が夢見る田園アルザスというより、ドイツ占領下のエルザスといった趣きであり(確かにこの曲が書かれた時代はそうだった)、「フランス山人の歌による交響曲」も、セヴェンヌの牧歌というよりむしろ、霧のアルプス連峰という感じ。
 つまり、オーケストラが非常に重く、しかも細部の明晰さを欠いた飽和的な響きに聞こえたのである。

 ただこれは、こちらが聴いた平土間後方下手寄りという席の位置も影響していたかもしれない。
 矢崎彦太郎ともあろう人が、こんな重いフランス音楽をやるはずもあるまい――と、演奏の特質を誤解することのないよう、休憩後は3階中央の席に移動して検証してみることにした。これは、仕事上、行なったことである。

 予想通り、こちらで聴くと、響きは極めてクリアーになり、内声部の動きさえも明晰に聞こえてくる。マニャールのこの交響曲は、いわゆる洒脱とか透明さとかいった特徴からは遠い音色だが、それでも彼の特徴たる精緻な作品構築の手法は、誤りなく再現されていた。演奏の緊迫度も充分であり、まず今日の演奏の中でも白眉といえる存在――と賞賛しておきたい。
 最初の2曲も、この場所で聴けば、もっと印象が違ったかもしれず、惜しいことをした。

 ダンディの交響曲でのピアノ・ソロは、相沢吏江子。久しぶりに聴いた。スケールの大きさを増した演奏と感じられたが、概してこの曲では、咆哮するオーケストラに音が消される傾向にあるため、その本領はしかとは解らないのが残念。
 
 ちなみにアルベリック・マニャール(1865~1914)は、マスネとダンディに学んだ作曲家で、第1次大戦勃発の年、自宅敷地内に侵入して来たドイツ軍を相手に単独で銃撃戦を行ない、壮烈な戦死を遂げた人として知られている。なんとも勇敢な音楽家だ。

コメント

相変わらず入りは悪いですが、客層が落ち着いていて良いです。こうした良心的な企画がいつまでも続くといいのですが。好きなマスネはアルベール・ウォルフとパリ音楽院の録音を愛聴しています。ああした洒脱さは望むべくもないのでしょうが、一生懸命演奏してる様は大変好ましく、満足して家路につきました。

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