2024-03

2010・1・19(火)METライブ・ビューイング
プッチーニ「トゥーランドット」

  東劇(東銀座)

 METの定番、フランコ・ゼッフィレッリ演出による絢爛豪華なプロダクションの映像配信。
 1987年の上演ライヴがDVDで出ているが、あれと基本的には同じ舞台だ。すでに四半世紀にも及ぶ長命な歴史を持つプロダクションだが、いまだに人気が衰えないようである。たしかに、これだけ手間とカネのかかった壮麗な舞台装置は、もう2度と出て来ないだろう。そういった意味でも、これは保存する価値が充分であることは事実だ。

 ただ、ゼッフィレッリの威光がまだ健在だった頃に記録されたDVDの映像と比較すると、今回(昨年11月7日上演のライヴ)の舞台は、登場人物たちの細かい演技の部分で、やはり隙間を感じさせる。これは、年月の経ったプロダクションを上演する際に、必ず付きまとう問題である。その時の舞台監督なり、演出補佐なりの感性と力量に由って左右されるだろう。

 今回の配役は、トゥーランドットをマリア・グレギーナ、カラフをマルチェロ・ジョルダーニ、リューをマリーナ・ポブラフスカヤ、ティムールをサミュエル・レイミーという布陣。
 グレギーナは再び丸々とした顔付きになり、声も一頃のドラマティックな迫力が薄れ、発音もかなり甘くなって来たようだが、流石にここぞという時には決める。時々ニタリと笑って見せるのは「冷酷な姫の不気味な冷笑」のつもりなのだろうが、彼女の場合にはそれがニコッ、と見えてしまい、さっぱりサマにならないのが困る。
 一方、ジョルダーニの方は、演技は全くの大根。DVDにおけるドミンゴのあの劇的な表情と比べると、天と地ほどの差だ。
 総じて今回の舞台が平板で単調に感じられたのは、他の2人も含め、主役たちの演技が甘いからであろう。むしろピン、パン、ポンら、3人の役人の方がずっと生き生きしていたくらいである。

 指揮は、最近日の出の勢いにあるアンドリス・ネルソンス。彼の音楽の良さが、この上演のハイライトであろう。
 テンポを抑制気味に、叙情面を強く打ち出した指揮で、派手さはないけれども音楽の美しさを充分に再現していた。先日ベルリン州立歌劇場で聴いた演奏(あの時はベリオ追補版だったが)と共通した印象ではあったが、今回はMETのオーケストラの良さもあるのだろう――この音楽にこれほど官能的な要素があったのかと改めて驚かされるほど、ニュアンスの細かい指揮を聴かせてくれていた。

 このMETビューイングのシリーズ、今春は「ホフマン物語」「ばらの騎士」「カルメン」「シモン・ボッカネグラ」「ハムレット」「アルミーダ」と続く。札幌から福岡まで各都市で、各1週間ずつ(1日1回)の上映だ。観ておいて損はないと思う。   
    http://www.shochiku.co.jp/met/  
 今週土曜日からの「ホフマン物語」(新演出)を楽しみにしているところだ。いつもこの上映を観ると、現地に行きたい気が澎湃として起こって来る。デセイの「ハムレット」、ゲルギエフの「鼻」、ムーティの「アッティラ」などが集中する3月には行きたいと思っているのだが――。
 

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