2024-03

2010・5・25(火)METライブビューイング ロッシーニ:「アルミーダ」

   銀座 東劇  6時40分

 おなじみメトロポリタン・オペラの、リアルな雰囲気の映像配信――METライブビューイングの今シーズン最後のプログラムは、めったにナマで(もしくは動画で)観る機会のないロッシーニの「アルミーダ」だった。今年の新演出である。

 演出は、トニー賞も受賞している女性演出家メアリー・ジマーマンで、METの公式プログラムに拠れば、彼女のMETでの演出は「ルチア」「夢遊病の女」に続くこれが3つめなのだとか。
 特に奇を衒ったものではなく、台本にごく忠実に基づいた手法だが、実に明解で論理的である。人物関係が明晰に描き出されていて、舞台の構図もはっきりしており、演技が精密でニュアンス豊かに行なわれていることも、物語をすこぶる解りやすくしているゆえんだろう。「ライオン・キング」などの装置を手がけたリチャード・ハドソンの舞台装置が、シンプルながら明るくて美しい。
 こういうストレート系の、しかも緻密な舞台は、世界のオペラ演出における中道路線というべきもので、METの代表的な路線の一つともいえよう。

 METお家芸のノーカット上演で、バレエから何から、省略なしに全部演奏しているのも良心的だ。
 第2幕の「アルミーダの魔法の森」の場面は、彼女のアリアが先に、バレエがクライマックスとして最後に置かれる版。このバレエの振付はグラシエラ・ダニエーレが担当したもので、テンポや転調、反復など音楽の変化のニュアンスを忠実に動きに反応させた、なかなかバランスの良いものであった。
 リッカルド・フリッツァの指揮はごく穏当なもので、それほど存在を意識させるほどのものでもないが、このバレエの部分での演奏は悪くない。

 ダマスカスの女王で魔法使のアルミーダは、METの看板ともいうべき存在のルネ・フレミングが歌った。相変わらず舞台姿には華がある。
 ただ、女王としては色気もあって美しいのだが、魔女として(の演技では)凄味が全然無いのはどうかな、という感。美しい舞台における優しい魔女でありたい――との狙いは、幕間でのご本人の話などからも窺えるけれど、しかしリナルドに裏切られ激怒して後を追う大詰めなどでは、やはりもっと「怒れる女王」としての魔性の迫力が欲しいように思う。ロッシーニ独特の歌唱法については、良く研究はしていたようである。

 十字軍の騎士として6人ものテノールを揃えるのは、大変だったろう。上手い人もいたし、そうでない人もいた。
 今回は一人が降板したため、英国の個性派テナーのバリー・バンクスが2役――十字軍の司令官リナルドを敵視して彼に決闘で斃される騎士ジェルナンドと、アルミーダの魔力の虜になったリナルドを救出する騎士カルロとの2役を歌い、手堅いところを聴かせた(したがってテノールは5人で済んだことになる)。
 主人公リナルドを歌ったのは、ローレンス・ブラウンリー。3年前にMETデビューしたアメリカの若手で、「セヴィリャの理髪師」のアルマヴィーヴァ伯爵が大当たりしたということだ。英雄リナルドという雰囲気ではないが、歌がきちんとしているのはいい。

 ノーカット上演で、2回の休憩もインタビューなどを入れてオリジナルどおりの時間で上映されるいつもの方法のため、終りは10時20分になった。
 このMETの映像配信、次は秋からのシーズンだ。私が特に楽しみにしているのは、新演出の「指環」「ボリス・ゴドゥノフ」「トーリドのイフィジェニー」などである。

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