2024-03

2010・5・27(木)下野竜也指揮NHK交響楽団 定期公演

  サントリーホール  7時

 ボッケリーニ~ベリオの「マドリードの夜の帰営ラッパ」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(ソロはダヴィッド・フレイ)、バーバーの「弦楽のためのアダージョ」、ブリテンの「シンフォニア・ダ・レクィエム」という、日頃保守的なN響にしては比較的珍しいプログラミングだ。
 「保守的な好みの高齢者客層」が多いN響定期では、「ちょっと現代的な曲をやると客がガタッと減る」のだそうな。だが、音楽界の発展のためには、やはりこのように少しずつ手をつけて行かなくてはなるまい。今夜だって、客席の反応は――まあ、静かな雰囲気ではあったが――決して悪くなかった。

 若手の筆頭格ともいうべき下野竜也が、本当にいい指揮をしてくれた。
 彼のN響への客演はこれが3度目になるらしいが、以前の定期でのような鯱張った遠慮のカタマリみたいな雰囲気も今や霧消し、堂々とN響を振る。音の響きのつくり方、起伏のつくり方も、極めてニュアンスが細かく、こちらをハッとさせるほど表情に富んだ音楽を聴かせてくれる。

 しかもN響が、また実に巧い。ベートーヴェンでのデュナーミクの多彩な変化といい、バーバーでのミステリアスな柔らかい音色といい、ブリテンでの明晰さといい――。
 優秀なオーケストラが本気で取り組めば、このような演奏を可能にもするのだという見本だが、それが「若手指揮者を相手に」やった演奏だというところが、日頃のN響の演奏を知る私にはひどく面白いことに感じられたのであった。

 このベートーヴェンの協奏曲を弾いたピアニストは、ダヴィッド・フレイ。シンの強い繊細さとでもいうか、きらきら輝きながら沈潜して行く音の流れの美しさは、素晴しい魅力である。
 第1楽章などアレグロ・コン・ブリオの指定からは遠く、あたかもアレグレット・トランクイーロともいうべきテンポとデュナーミクとエスプレッシーヴォの演奏だったが、これに下野とN響が絶妙につけて行ったことは前述の通り。

 冒頭に演奏されたベリオは、面白い。1977年に来日したハイティンクとコンセルトヘボウ管がアンコールでこれを演奏した時のことを、今でも鮮明に覚えている。
 私はそれをFM放送のためにライヴ録音していたのだが、事前に何も情報がなかったので、この曲のクライマックスでの音量にはびっくりしたものだ。
 演奏会終了後、舞台に行って楽員の譜面を覗き込み、あのメロディを口笛で吹いていたら、ステマネらしいのがニコニコしながら「気に入ったか?」と話しかけて来たっけ。

 「マドリードの・・・・」の主題そのものはシンプルだが、ベリオのオーケストレーションは実に複雑多様で、どの声部を浮かび上がらせるかによって、曲の様相はガラリと変わってしまう。ハイティンクとコンセルトヘボウの演奏は、実に巧かった。その後何度かナマや録音で聴く機会があったが、たいていは雑然たる演奏になっていて、落胆させられたものである。
 その点、今夜の下野=N響の演奏は非常に良くまとまった部類に属するもので、下野のセンスはさすがと言いたいほどであった。これでなお、旋律的な要素がもう少し強く浮彫りにされていれば、より親しみやすい曲に感じられただろう。最後の部分など、弦楽器群の主題旋律をもう少し明確に聴かせてくれれば、多くのお客さんが帰りがけに鼻歌なり口笛なりで口ずさめたかもしれない(?)。

コメント

今回の下野さんとN響の演奏は、前回までとは違って、好ましく思いました。今後が楽しみです。

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