2024-03

2010・5・30(日)ユベール・スダーンと東響のシューベルト「ザ・グレイト」

  ミューザ川崎シンフォニーホール  2時

 東響の「川崎名曲全集」の一環。

 昨年から今年春にかけて行なわれたスダーンと東響の「シューベルト交響曲ツィクルス」は、私がこれまで聴いた東京交響楽団の演奏の中でも一、二を争う名演だと思っているのだが、あの中には「ザ・グレイト」が入っていなかった。ツィクルスに先立つ別の機会に演奏したから、という理由だったけれど、私はそれを聞き逃していたので、今回のコンサートには早くから目をつけていたのである。

 演奏は、予想を裏切らない出来であった。
 スダーンのアプローチは、他の7つの交響曲と全く軌を一にするもので、彼独特の剛直な響きと翳りのある音色のうちに、スコアの隅々にまで神経を行き届かせた精妙な音楽づくりである。シューベルトの音楽のロマン的な面を排し――「未完成」や「ザ・グレイト」においても――むしろ古典的な、毅然たる造型を求めたタイプの演奏といえよう。

 テンポには殊更な作為も誇張もないので、全体はイン・テンポの演奏という印象が強いが、音のつくりが綿密なので、単調になることは全くない。
 第2楽章の、あの有名なホルンと弦との秘めやかな対話など、スダーンはすべてをイン・テンポで押し通す。それは、いわゆる「彼岸的」な神秘からは程遠いイメージともいえるが、しかしイン・テンポの演奏が陥りがちな素っ気なさや、無造作な感じなどは、ここには一切無い。非常に自然な流れのテンポの、丁寧なつくりの音楽である。
 第3楽章のトリオ冒頭で、ホルンを含む管楽器のリズムに揺れるような強弱の起伏をつけたり、第4楽章第2主題の中での低音のチェロとコントラバスのリズミカルなピチカートを心持ちクレッシェンドさせたりという趣向も、自然な感興を呼ぶものだろう。

 なお弦は14-12-10-8-8という編成であり、コントラバスが1プルト増やされていたが、これも全体の響きに重心豊かな、剛毅な安定感がつくり出されていた理由の一つであろう。

 東響は、ホルンの重奏部分が常になく粗っぽかったこと(第1楽章冒頭や、第2楽章の前述の弦との対話個所での4分音符――ここは一番大切な美しいところだったのに!)を除けば、いつものスダーン色に染められた快演だった。特に、この曲では活躍の場が多いオーボエの荒絵理子のソロが映えていた。

 プログラムの前半では、同じシューベルトの第4交響曲「悲劇的」が演奏された。これは、ツィクルスでも聴いたものだ。もちろん今日は、演奏の内容から言っても、決して「付け足し」の役割ではなかったのである。

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