2024-02

2010・6・12(土)旅行日記第7日 WDR響(ケルン放響)演奏会
首席指揮者ビシュコフ最後の定期

    ケルン・フィルハーモニー  8時

 ケルンの「ニーベルングの指環」の、中休み第2日。それを利用して、今日はケルン放送響のコンサートを聴きに行く。

 ケルン大聖堂とほとんど隣接する位置にあるケルン・フィルハーモニーは、大鉄傘の下に盛り上がるアルプス・スタンド(?)といった雰囲気の階段状客席をもつ、巨大だが美しく清潔なホールだ。
今回はDブロック13列という、ずっと下手側寄りの中段の位置の席だったが、かなり偏った場所にもかかわらず、音は良く響いて聞こえ、なかなかよろしい。

 おなじみのケルン放送交響楽団(これは日本での呼び名で、現地での現在の名称はWDR交響楽団・ケルン)の定期演奏会。1997年より首席指揮者のポストに在ったセミョン・ビシュコフは、今日の演奏会でその任期を終る。
 プログラムは、「トリスタンとイゾルデ」第2幕(演奏会形式)をメインに、シェーンベルクの「浄夜」(30分)、ガンサー・シュラーの「Where The Word Ends」(約27分)という長大なもので、終演は11時になった。

 少なくともこのホールの、この位置の席で今日の演奏を聴く限り、ビシュコフとWDR響がつくる音楽は、サントリーホールで聴くよりもずっと豊麗で剛直な印象である。上手側に並ぶコントラバスの正面にこちらの席がある(首席奏者・河原さんの顔も正面に見えた)せいか、低音部が力強く、オーケストラ全体を支えているように聞こえる。

 弦のみによる「浄夜」は、大きめの編成にもかかわらず、各声部の動きが明晰に交錯し、オリジナルの弦楽6重奏のイメージを蘇らせていた。
 たっぷりとした響きが広がる快さのわりに、何故かいわゆる陶酔的な味は感じられなかったが、このあたりが昔からのビシュコフの癖だろう。このホールの潤いのあるアコースティックなかりせば、もしかしたら乾いた「浄夜」に聞こえたかも――というのは意地の悪い見方か。

 シュラー(1925年ニューヨーク生れ)の作品は、非常に大きな編成を持つ豪壮な曲だ。昔の彼の「第3の流れ」からは既に離れ、完璧な「クラシック路線」の中に在るともいえる大規模な曲である。ボストン響125周年記念として2005年に作曲されたもので、これが欧州初演とかいう話だ。オーケストラに近いこの席からは、入り組んだ管弦楽のそれぞれの楽器群の動きが手に取るように聞き取れ、大いに愉しめた。作曲者自身も元気に顔を見せ、舞台に呼ばれて拍手を浴びていた。

 休憩後の「トリスタンとイゾルデ」第2幕では、オーケストラの響きはそれまでの2曲とは打って変わり、良い意味で飽和された豊麗なものとなった。
 ビシュコフの指揮も、彼がつい最近東京でパリ・オペラ座のオーケストラを指揮した演奏と、ほぼ同じイメージである。幕切れ近くの陰鬱な絶望感を描く部分の演奏にはこの指揮者らしい淡彩さもあるが、二重唱の沈潜した個所などではデュナーミクも丁寧につくられており、全体としては私は気に入った。
 席の位置の関係で、歌手の声を正面から聞けなかったので、今日は専ら「トリスタン」のカラオケ(?)――ワーグナーのオーケストラの幻想的な美しさの醍醐味を余す所なく堪能させてもらった次第である。

 なお歌手陣は、クリフトン・フォービス(トリスタン)、ヴィオレータ・ウルマナ(イゾルデ)、ペトラ・ラング(ブランゲーネ)、フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ(マルケ王)、サムエル・ユン(クルヴェナルとメーロトの2役)という錚々たる顔ぶれ。

 「遠くから聞こえるように」響くべき「ブランゲーネの警告」では、ラングがわれわれの席のすぐうしろで歌った。
 演奏会形式ではよくこのように客席のどこかで歌う方法が使われるが、いくら指揮者のいるステージからは「遠く」ても、客の方からすれば「すぐ近く」なのだ。夢の中から聞こえるような「警告」が近距離の大音声で歌われては、傍にいる客は、少なくともその瞬間は演奏に没入できない。そもそも演奏は誰に聞かせるために行なうものであるか、指揮者やプロデューサーは考え直すべきであろう。

コメント

ビシュコフは次はどこのポストにつくのでしょうか。僕としては、ぜひともさらなる飛躍出来うる場所で活躍してほしいと願っています。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/762-885b6a45
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・衛星デジタル音楽放送
ミュージックバード(エフエム東京系) 121ch THE CLASSIC
「エターナル・クラシック」
(毎週日曜日 12:00~16:00放送)出演

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中