2024-02

2010・6・20(日)新国立劇場の「カルメン」

   新国立劇場  2時 

 2007年秋にプレミエされた鵜山仁演出のプロダクション。今回初めて観たが――。

 何とも間延びした舞台。マウリツィオ・バルバチーニと東京フィルの、生気のない、暗く重い演奏。
 それに、主役の3人――カースティン・シャヴェス(カルメン)、トルステン・ケルル(ドン・ホセ)、ジョン・ヴェーグナー(エスカミッロ)は、いずれもこれらの役柄には向いていないのではないか? 
 ケルルは、第2幕の最後に激怒した瞬間にだけ、「リエンツィ」で示したあの迫力を垣間見せた。ヴェーグナーは、やはりクルヴェナルなどワーグナー物の渋い役の方が向いている人だ。今日はおそろしく若作りで現われたが、歌の方は、とても粋な闘牛士という雰囲気じゃない。

 あまりに活気のない演出と演奏とにがっくりして、第2幕のあとで失礼してしまった。

コメント

新国立劇場「カルメン」6月20日

「同じものを観て聴いても人それぞれ印象が違う」と東条さんの評論を興味深く拝見しました。

今回の「カルメン」は、「2007年初演時に観たし、演出は分かっているし、衣装もあまり好きじゃない(第2幕のカルメンはどう考えても「白い衣装」じゃないだろう…など)。今回は観ても観なくてもいいなぁ。シーズン券を買ってしまったのでまあ観るか」というのが観る前の気分でした。

実際に観ると、「歌手が違うとこうも違うものか…」との上演でした。これは私だけの印象でなく、何名かの知人も同意見でした。

初めて聴いたキルスティン・シャベスはとても魅力的なカルメン。得意の役にしていると言うだけあって自由歌っていた印象。かなり強い声ですが、チャネレントラやオクタヴィアンをレパートリーにしているとのことなので別の役でも聴いてみたいと感じました。

演出は鵜山仁ですが、再演だから本人が立ち会っているとは思えず(再演演出者は存在する)、半分くらいはシャベス演出と言って良いのではないかと思いました。
シャベスは極めて妖艶なカルメンでした。
特に第1幕など、初演時の歌手はこんなにホセを誘ってはいなかったとの記憶(初演時の歌手は色白で品行方正な雰囲気の人でカルメンのイメージとは程遠くて…)。

プログラムでは前回公演のカラー写真を使っていますが、前回の歌手は第1幕では編み上げ靴をはいていたのにシャベスははだし。登場の時に着ていた服は前回は濃い綺麗なブルーでしたが、今回はくすんだ色だったような気がします(衣装を変えたのか?持参か?)。喧嘩の後で登場すると上着は脱いで白い下着姿になっている訳ですが、(着崩して)胸が出そうな程にギリギリまで胸が開いています。近くで観ている人は皆ハラハラしたと思います(休憩時間にそういう会話も聞こえました)。

東条さんの評論では「間延びした舞台」「生気のない、暗く重い演奏」とありましたが、シャベスが第1幕でたっぷり歌い、たっぷり演技したいらしく彼女がスピードを遅くしていたと思います。あまりに妖艶なので、ゆっくり歌われると落ち着かず「早く過ぎてくれ」と感じないこともなかったですが、近く(3列目中央)で観ていると視覚と音楽と両方があるので特に「生気がない演奏」との印象にはなりませんでした。

また、シャベスは冷静に見ると絶世の美人という訳でもないのに、妖艶な態度、こぼれそうな胸のせいで「とっても美人」に見えてしまい、思いがけず、ホセの気分を体験することにもなりました。
実際、第1幕が終わったところで、若いカップルが「夢に出てきそうな妖艶さ」と言っているのが聴こえて来ました。

第2幕では彼女は編み上げ靴を履いていましたが、ホセが登場したところで靴を脱いで片方ずつ投げる…、ホセのために踊りを踊るところでは胸の外側にはさんだカスタネットを取り出して使う…(本人の本物のカスタネット演奏は珍しい)などをしていました。これも初演にはなかったと思うので、彼女が過去のカルメンの好きな演出から借用したか自分で考えて好きなように演出したかだと思います(初演時も同じだったとしたら全然覚えていないので「効果」なしだったのでしょう)。

第2幕の五重唱はシャベス以外は日本人ですが、なかなか良かったと思います。ここは歌がやたら早すぎて演奏とは合っていませんでした。ダンカイロ、レメンタード、フラスキータ、メルセデスはなかなか上手なので第3幕第1場のカルタの歌も聴き応えがありました。
他の日本人として、スニガ、モラレスも合格点かと思いますが、モラレス役の青山貴は高音が上がりきらずちょっと…。

「シャベス」演出は第3幕でも感じられました。
第1場でミカエラが登場する一連の場面では「なんだ、ホセはこんな美人の彼女がいるんじゃないか」の雰囲気であきれる態度で盗賊仲間と会話したりしていました。
第2場のホセとの遣り取りでは手を広げてホセのナイフを「待つ」ので、「自殺」をほのめかす演出のようでもありますが、実際の彼女の態度は「刺せるものなら刺して見ろ」との「待ち」。実際刺されるのはエスカミーリョの勝利を喜んでいるところで背中から…との演出です。

その他の歌手はミカエラ役の浜田理恵が予想以上に良いと思いました。コンサート形式の「ペレアスとメリザンド」では消えそうな感じでしたが、力強いミカエラでした。カーテンコールの拍手も多かったです。

ホセ役のトレステン・ケールは巨漢でちょっとホセの繊細さにはイメージとしては合わない感じ。時々鼻にかかった感じの声は好きじゃないと思いましたが歌としてホセに合わないとまでは感じませんでした。

エスカミーリョ役のジョン・ウェーグナー。この役には品格が欲しいですが、その品格が充分感じられなかったと思います。かっこよくない。歌も合わない。この人のエスカミーリョは東条さんがおっしゃる通りです。
ヴェーグナーに限らず、エスカミーリョらしいエスカミーリョにはなかなか会えないと感じますが、初演時はヴィノグラードフ。私は今まで観たエスカミーリョの中でこのヴィノグラードフのエスカミーリョが一番好きだし、エスカミーリョのイメージと合っていると感じます。

新国立劇場と言えば合唱。この作品でも合唱は良かったと思います。第3幕第1場は特に。
また、子供の合唱は演技まで堂々としていて感心します。
最近の日本人の子供の合唱は添え物でなく主役並です。世界的な指揮者などとも共演している訳だからだんだん力もつきますね。

個人的意見として、新国立劇場にとって「カルメン」は鬼門。今回の作品は3つ目の演出ですが、再演したのは初めてではないかと思います(特に最初の「カルメン」は問題作)。

最終日だったので舞台写真2枚が売り切れ。売り切れとなると知りたい。どんな写真だったのだろう。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

https://concertdiary.blog.fc2.com/tb.php/769-0a511c5f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since Sep.13.2007
今日までの訪問者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

・衛星デジタル音楽放送
ミュージックバード(エフエム東京系) 121ch THE CLASSIC
「エターナル・クラシック」
(毎週日曜日 12:00~16:00放送)出演

・雑誌「モーストリー・クラシック」に「東条碩夫の音楽巡礼記」
連載中